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ごろねこの本棚【2】(1)

1:ごろねこ :

2019/08/21 (Wed) 22:19:17

https://bbs2.fc2.com//bbs/img/_859700/859618/full/859618_1566454713.png 『ブランカ(1)』(谷口ジロー)
祥伝社・1985年10月30日刊・A5判

私は、好きなまんが家の数が多すぎて、ベスト30を選ぶのも苦しいほどだが、谷口ジローは、場合によってはベスト1に選ぶかも知れない作家である。谷口の作品を初めて読んだのは『「坊ちゃん」の時代』(第三部が刊行された時点)なので、かなり遅い。その次に読んだのが旧作の『ブランカ』で、これが決定打となって私は谷口ファンになった。うっかりすると、よくある「劇画」と思ってしまいそうだが、谷口作品は、絵も構成もそれまでの「劇画」とは違っていた。物語性においても芸術性においても、一段上質なジャンルを作っていた。たとえば、どの1コマを選んでも、物語の奥行きを知り、精密な絵の完成度を知る。晩年の作品はもちろん、『ブランカ』のような初期作においてもそうであるのは、今さらながら驚きを禁じ得ない。なお、祥伝社版では『超戦闘犬ブランカ』というタイトルになっており、後の小学館版ではただの『ブランカ』となっているが、祥伝社の「コミック・ノストラダムス(後にマガジン・ノンに改名)」連載中に「超戦闘犬」と付いていたのか、あるいは単行本化に当たって(内容をわかりやすく)付けたものかは不明。
2:ごろねこ :

2019/08/22 (Thu) 22:07:26

https://bbs2.fc2.com//bbs/img/_859700/859618/full/859618_1566479246.png 『ブランカ(2)』(谷口ジロー)
祥伝社・1986年7月20日刊・A5判

よく「泣けるまんが」などというキャッチフレーズがあるが、私はさすがにそうしたまんがを読んで泣いたことなど一度もない。だが、この『ブランカ』は泣いた。感動的なストーリーと相俟って描写力がすごい。ラストのブランカの表情を見れば、誰でも涙してしまうのではないかと思う。なお、この作品は連載途中に掲載誌が休刊してしまったが、描き下ろし100枚を加筆して完結した。雑誌の休刊が86年4月号で、加筆した単行本の刊行が7月付ということは、ほぼ連載が途切れないペースで完結まで執筆できたようだ。休刊によって作品の勢いを止めることがなかったのはよかったと思う。
3:ごろねこ :

2019/08/23 (Fri) 22:15:40

https://bbs2.fc2.com//bbs/img/_859700/859618/full/859618_1566566140.png 『神の犬(1)』(谷口ジロー)
小学館・1996年9月1日刊・B6判

忘れた頃に『ブランカ』の続編『神の犬』が、「ビッグコミック」で始まった。ブランカの子供たちを主人公にした話である。私は、忘れた頃に作られる続編は、原則として好きではない。10年も20年も、あるいはそれ以上経って作られる続編には、なぜか見苦しさを感じる。あるいは作者の死後に、別の作者によって描かれる続編(アナザー・ストーリー)の類も同じである。人の褌で相撲をとるなと言いたい。ただし「原則として」というのは、作品の出来がすべてに勝るからである。つまり、出来がよければ許す。『神の犬』については、『ブランカ』が素晴らしかった分、どうしても蛇足だという気持ちを拭い去れなかった。だが、『ブランカ』のラストで確かにブランカの子供たちは生まれている。谷口も『ブランカ』を完結させても「私の中で膨れあがったまだ多くの『ブランカ』のイメージが、わだかまっていた」と書いているように、そのイメージを子犬たちに託していたのかも知れない。ならば、『神の犬』は描くべくして描かれた続編と言える。ただ一つ、私が気になったのは、『ブランカ』のラストで生まれた子犬は3匹だが、『神の犬』に登場する子犬は2匹だということである。
4:ごろねこ :

2019/08/24 (Sat) 22:18:59

https://bbs2.fc2.com//bbs/img/_859700/859618/full/859618_1566652739.png 『神の犬(2)』(谷口ジロー)
小学館・1997年2月1日刊・B6判

具体的に続編の構想がないときは、ブランカの血を受け継いだ野生の狼の子は3匹に描かれている。だが、その続編の話が来て、作者は新たな構想を組み立てる。その結果、ブランカの血を受け継ぐ2頭の狼の話になった。続編とはどんなに趣向を変えても基本的に本編の繰り返しである。黒毛のタイガと銀毛のナギという2頭が、表裏一体となってブランカの運命を繰り返す。ブランカと同じようにベーリング海峡の流氷の上を故郷に向かって疾走することになるのである。
5:ごろねこ :

2019/08/25 (Sun) 22:14:15

https://bbs2.fc2.com//bbs/img/_859700/859618/full/859618_1566738855.png 『Mon année Ⅰ.Printemps』(谷口ジロー、JD Morvan)
DARGAUD・2009年・A4判大

谷口作品についてはまた採り上げたいが、今はもう1冊だけ。これはフランスで出版されたバンド・デシネである。刊行されるとき新聞にニュースが載っていて、ぜひ購入したいと思ったが、フランスの出版社にどのように注文していいかわからなかった。洋書店を通して注文しようかとも思ったが、詳しい情報もわからず、そのうち、どうせフランス語は読めないからいいや、と諦めてしまった。いずれ翻訳版がでたら買おうと思っていたのである。結局、翻訳本は出なかったが、数年後、古書店で見つけて購入した。もちろんフランス語なので読めないが、じつは内容がわからないわけでもない。この本は函入りの2分冊となっており、本冊とネーム(鉛筆描きの絵コンテ)の本とが収録されている。そのネームは鉛筆描きを印刷したものなので読みづらいが、日本語で書かれており、本冊と照合すれば何とか内容が分かるのである。ダウン症の少女キャプシーヌを主人公とした物語で、これが「春の章」なのだと思う。続けて夏秋冬と全4章の物語になる予定だったのだろうか。
6:ごろねこ :

2019/08/26 (Mon) 22:13:53

https://bbs2.fc2.com//bbs/img/_859700/859618/full/859618_1566825233.png 『片々草紙(ぺんぺんぞうし)』(齋藤なずな)
話の特集・1992年12月15日・A5判

2018年3月、齋藤なずなの新作が20年ぶりに刊行された。『夕暮れへ』という単行本である。20年の間、何をしていたかは呉智英氏の解説を読んでほしいが、待望の新刊だった。だが、購入したときは忘れていたが、『夕暮れへ』という短編は『片々草紙』の中の1編のタイトルだったのだ。『夕暮れへ』は10編の短編が収録されているが、そのうち8編は『片々草紙』からの再録で、2編だけが新作だった。改めて『片々草紙』を読むと、片々たる些事から人生模様を切り取る巧さに感心する。
7:ごろねこ :

2019/08/27 (Tue) 22:12:42

https://bbs2.fc2.com//bbs/img/_859700/859618/full/859618_1566911562.png 『夕暮れへ』(齋藤なずな)
青林工藝舎・2018年3月23日刊・A5判

『片々草紙』の絵を見たとき、昭和初期の挿絵か、と思うほど古臭く感じたが、その古さが上の世代の人生の闇や重さを語るのに軽妙さを与えていたように思う。『夕暮れへ』収録の新作(といっても、2012年、15年に描かれたもの)『トラワレノヒト』『ぼっち死の館』を読むと、以前より絵も物語も密度が濃くなっているのがわかる。もはや登場人物は私にとって上の世代ではなくなり、老いと死を語る人生の闇は比べものにならないほど深くなった。だが、不思議なことに、やはり軽妙である。
8:ごろねこ :

2019/08/28 (Wed) 22:08:36

https://bbs2.fc2.com//bbs/img/_859700/859618/full/859618_1566997716.png 『ガモラ』(楳図かずお)
太田出版・1998年1月20日刊・A5判

1964年から65年にかけて佐藤プロから出版された貸本全3巻の復刻本。「4巻へ続く」とあったが、当時、いくら探しても4巻は見つからなかった。もっとも貸本ではそんなことは当たり前で、さいとう・たかをの『デビルキング』も、手塚治虫の『白いパイロット』や『キャプテンKen』でさえも続巻は見つからず、未完のままだったのである。ちょうど当時は怪獣ブームの頃で、怪獣まんがもポツポツと出てきた頃だったと思うが、普通の怪獣まんがを目当てに『ガモラ』の1巻を読んだ私は、何だ、白土三平の世界じゃないかと拍子抜けしたのを覚えている。2巻も違和感をもって読み進め、3巻でガモラが銀座に出現したあたりで、ようやく私の求めていた怪獣まんがになった気がしたものだ。この復刻にあたり、描かれなかった部分をすっ飛ばして、最終章14ページが新たに描き下ろされている。もし完結していたとしても、子供の私などには理解不能のSFまんがであったのだろう。なお、同時期のSFヒーローまんが『マスクボーイ』も復刻収録されている。
9:ごろねこ :

2019/08/29 (Thu) 22:13:42

https://bbs2.fc2.com//bbs/img/_859700/859618/full/859618_1567084422.png 『〔増補改訂版〕鱗粉薬』(津野裕子)
創英社・2009年5月22日刊・A5判

〔1〕ー(14)で『鱗粉薬』を紹介したとき、増補改訂版を探し出せず、購入したかどうかわからないと書いたが、購入していた。もう7、8年、本を整理していないので、本の在り処はもちろん、持っているかどうかもわからなくなっているものが多い。これは、青林堂版に、単行本未収録だった『水海(1)(2)』に『水海(3)』を描き下ろして完結させた作品を加えている。
10:ごろねこ :

2019/08/30 (Fri) 22:08:16

https://bbs2.fc2.com//bbs/img/_859700/859618/full/859618_1567170496.png 『ゴルゴ13(1)』(さいとう・たかを)
小学館・1970年1月1日刊・B6判

正式には「ビッグコミック臨時増刊号・特集ゴルゴ13シリーズ」で、『ゴルゴ13』以外の作品(石森章太郎『佐武と市捕物控』など)も刊行されていた。なお、翌71年6月刊行号から「別冊ビッグコミック」となり、現在に至っている。『ゴルゴ13』の単行本は数多くの種類が刊行されているが、最初に出たのがこのシリーズ。初期にはナンバーはついていないが、これが№1になる。「ビッグコミック」のさいとう作品が『捜し屋はげ鷹登場!!』から『ゴルゴ13』という作品に変わったのは知っていたが、ちゃんと読んでいなかったので、これが出たとき、買ってみたのだった。発売は69年の12月だったはずなので、もうすぐ50年になる。2019年8月現在、№204まで刊行され、我ながら、よく買い続けてきたものだと思う。
11:ごろねこ :

2019/08/31 (Sat) 22:10:19

https://bbs2.fc2.com//bbs/img/_859700/859618/full/859618_1567257019.png 『ゴルゴ13(2)』(さいとう・たかを)
小学館・1970年5月1日刊・B6判

№1、№2の表紙絵は、いかにも力を入れて描いている感じがあり好きだが、№3以降はデザイン的要素が強くなった。また№2までは4色カラーが16ページある。『ゴルゴ13』はどのシリーズも収録順が異なるが、「別冊ビッグコミック」版も、発表順とは異なる。
〔№1収録話〕ビッグセイフ作戦(第1話)、色褪せた紋章(第4話)、バラと狼の倒錯(第3話)、ブービー・トラップ(第7話)
〔№2収録話〕白夜は愛のうめき(第6話)、黒い熱風(第8話)、狙撃のGT(第12話)、檻の中の眠り(第5話)、南仏海岸(第9話)
『ゴルゴ13』の人気作を選ぶといった企画を目にすることがあるが、もし私が選ぶとしたら、ほとんど初期作になりそうだ。読み返せば、それ以降の話にも面白いものはあったかも知れないが、強く印象に残っているのは少なくとも第100話以前の話である。
12:ごろねこ :

2019/09/01 (Sun) 22:08:13

https://bbs2.fc2.com//bbs/img/_859700/859618/full/859618_1567343293.png 『ゴルゴ13(3)』(さいとう・たかを)
小学館・1970年8月1日刊・B6判

〔№3収録話〕メランコリー・夏(第13話)、殺意の交差(第16話)、ベイルートⅤIA(第19話)、最後の間諜-虫(インセクト)-(第20話)、駅馬車の通った町(第11話)、WHO!?(第15話)
もし『ゴルゴ13』を読んだことがないという人がいたら、ぜひ初期作を読むように薦めたい。ちょっと振り返ってみても、各話が変化に富んでいてじつに面白い。『メランコリー・夏』は「張り込み」と「わたしを愛したスパイ」を合わせたような面白さ。『ベイルートVIA』と『最後の間諜-虫-』は続きものだが、「ミッション・インポッシブル」というより規模の大きい「スパイ大作戦」といった感じ。『駅馬車の通った町』は、ほぼ同じ話が『子連れ狼』にもあるのだが、どちらも脚本担当が小池一雄(後の小池一夫)だからだろうと思っていた。ところが確認すると『駅馬車の通った町』の脚本は「小川新」となっている。ちなみに№1から№3までの他の全話は「小池一雄」である。これはどういうことなのか。同じ話なので、あえて別名にしたのだろうか。
13:ごろねこ :

2019/09/02 (Mon) 22:25:17

https://bbs2.fc2.com//bbs/img/_859700/859618/full/859618_1567430717.png 『ゴルゴさんち』(セツコ・山田)
小学館・1983年9月1日刊・A5判

セツコ・山田は、1960年に『こねこあげます』で貸本デビュー。さいとうプロで山田節子として『アコ行状記』シリーズなどを描いていた。63年にはさいとう・たかをと結婚している。60年代後半は出産・育児のために仕事を休んでいたが、70年頃から仕事を再開し、家庭まんが……後には猫まんがばかりを描くようになる。「別冊ビッグコミック版・ゴルゴ13」には71年の6月刊行号よりまんがを描くが、当初は単発のまんがを描いており、74年の11月刊行号より『Sさん一家』を描き始める。それを単行本化するときに『ゴルゴさんち』と改題した。連載では、83年4月刊行号(56号)までは『Sさん一家』で、57号は休載し、83年10月刊行号(58号)から『ゴルゴさんち』となっている。
14:ごろねこ :

2019/09/03 (Tue) 22:21:58

https://bbs2.fc2.com//bbs/img/_859700/859618/full/859618_1567516918.png 『続・ゴルゴさんち』(セツコ・山田)
小学館・1983年10月1日刊・A5判

各話確認したわけではないが、おおよそ『正続・ゴルゴさんち』には、『Sさん一家』として発表された作品が収録されている。そして83年10月刊行号(58号)から始まった『ゴルゴさんち』は、休載をはさんで86年4月刊行号(69号)まで続く。一応、そこまでが『ゴルゴさんち』であり、それらを含んだ(おそらく)完全版の刊行は、2009年まで待たなければならない。さらに、『Sさん一家PARTⅡ』が1990年10月刊行号(87号)から始まっている。だが、問題なのは『Sさん一家』のSさんと『Sさん一家PARTⅡ』のSさんは別人なのである。
15:ごろねこ :

2019/09/04 (Wed) 22:18:38

https://bbs2.fc2.com//bbs/img/_859700/859618/full/859618_1567603118.png 『ゴルゴさんち』(セツコ・山田)
ぶんか社・2009年8月20日刊・文庫判

この文庫版には「別冊ビッグコミック版・ゴルゴ13」に連載された『Sさん一家』と『ゴルゴさんち』が収録されている。だが、87号から始まった『Sさん一家PARTⅡ』は単行本化されていない。『Sさん一家』『ゴルゴさんち』は一話3~6ページのページまんがだが、『Sさん一家PARTⅡ』は4コマまんがである。だが、それ以上に大きな違いは、『Sさん一家』『ゴルゴさんち』の「Sさん・ゴルゴさん」は「さいとう・たかを」のことだが、『Sさん一家PARTⅡ』の「Sさん」は「セツコさん」であることだ。『Sさん一家PARTⅡ』は、母親と娘2人、猫6匹という家族構成であり、父親は存在していない。『ゴルゴさんち』が終わった86年から、『Sさん一家PARTⅡ』が始まる90年の間にさいとう・たかをとセツコ・山田は離婚しているのである。なお、『Sさん一家PARTⅡ』は2001年4月刊行号(131号)まで続いた。
16:ごろねこ :

2019/09/05 (Thu) 22:12:34

https://bbs2.fc2.com//bbs/img/_859700/859618/full/859618_1567689154.png 『散歩しながらうたう唄』(森雅之)
ふゅーじょんぷろだくと・1986年7月25日刊・A5判

まんがは元来「絵」であり、一枚でなく一連のものであっても「絵」であった。それが、文でいえば散文のような語り口を持つのが常態となってしまった。では、韻文のようなまんがはあるのだろうか。たとえば、リリシズム溢れる少女まんがや、ポエムまんがと呼ばれたもの、具体的には石森章太郎の『ジュン』とか岡田史子の作品とかは、物語を語る散文まんがではなく、詩のまんがと言えるのではないかとも思う。だが、散文の語り口をもって作られていれば、散文詩であっても韻文ではない。詩的なまんが、詩を語るまんがにすぎなかった。そんな中、韻文の語り口を持つまんがが突如として現れた。まさしくまんがが詩そのものであった。それが、森雅之のまんがである。
17:ごろねこ :

2019/09/06 (Fri) 22:10:50

https://bbs2.fc2.com//bbs/img/_859700/859618/full/859618_1567775450.png 『円棺惑星』(ますむらひろし)
朝日ソノラマ・1996年2月20日刊・A5判

ますむらひろし作品というと、『アタゴオル物語』といい、宮沢賢治のまんが化シリーズといい、猫のイメージが強いが、もちろん猫の登場しない作品もある。これは「眠れぬ夜の奇妙な話」に掲載した7編の短編集で、猫はまったく登場しない。グロテスクなファンタジー(というかSF)なのだが、ますむらの絵に、あまりグロテスクな感じはない。もし伊藤潤二が描いたら、笑えるほどグロテスクな作品になったに違いない。
18:ごろねこ :

2019/09/07 (Sat) 22:06:06

https://bbs2.fc2.com//bbs/img/_859700/859618/full/859618_1567861566.png 『地獄星レミナ』(伊藤潤二)
小学館・2005年10月1日刊・B6判

さて、伊藤潤二作品といえばホラーだが、笑えるほどとんでもない話が多い。その中でもどれが一番笑ってしまうかと考えたとき、まず思い浮かんだのが、この作品だった。星を食い尽くす星、といえばブラックホールでもいいのだが、地獄星レミナは、超巨大な目で獲物を見つけ、超々巨大な舌で獲物を舐め回し、超々々巨大な口で本当に星を食べてしまうのだ。レミナの由来となった少女・麗美奈は暴徒に襲われ、たまたま知り合ったホームレスに助けられる。だが、レミナに舐め回された地球はスピンがかかり遠心力によって低重力になり、暴風に飛ばされて逃げる麗美奈とホームレスは、宙を飛んだまま地球を一周してしまう。ギャグまんがでも描かないこんな状況を、シリアス(?)なホラーまんがで描いてしまうのだから、これは笑わずにはいられない。
19:ごろねこ :

2019/09/08 (Sun) 22:14:01

https://bbs2.fc2.com//bbs/img/_859700/859618/full/859618_1567948441.png 『フランケンシュタイン』(伊藤潤二)
朝日ソノラマ・1994年12月20日刊・A5判

奇想天外なホラーを連発していた伊藤潤二の力を、私が再認識した作品はこれである。フランケンシュタインの怪物の話は、映画化によってメアリー・シェリーの小説からは、かなり遠ざかったキャラクターになってしまっていた。怪物は嵐の夜に雷のエネルギーを受けて誕生するのではなく、もの寂しい夜にひっそりと目を開ける。また、ほとんど言葉を喋れず、人々に追い回される存在でもなく、説得力を持つ雄弁家で、神出鬼没な存在である。それをほぼ原作に忠実に描き、何よりも怪物のヴィジュアルをボリス・カーロフの呪縛から解き放ったことが見事である。作者は「ミイラ男とまちがえられそう」と謙遜しているが、まったく新しい、それでいて怪物のイメージを損なうことのない造形は、簡単なようでいて難しい。
20:ごろねこ :

2019/09/09 (Mon) 22:11:27

https://bbs2.fc2.com//bbs/img/_859700/859618/full/859618_1568034687.png 『昭和金物屋物語』(御茶漬海苔)
笠倉出版社・2007年11月10日刊・A5判

上の流れで、伊藤潤二が愛描について描いた『伊藤潤二の猫日記よん&むー』を紹介しようと思ったが、本をすぐには探せ出せなかった。そこで、伊藤と同じホラーまんが家の御茶漬海苔が描く自伝まんがを紹介しよう。金物屋の物語というのは珍しいが、作者の家業が金物屋だっただけで、むしろ父親の物語といえる。昭和45年、50年、60年の金物屋物語三編と、母親の少女時代を描く一編の計四編を収録。ホラーではないのに、登場人物が一癖も二癖もあるように見えてしまって独特な雰囲気がある。

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