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ごろねこの本棚【13】(1)

  • ごろねこ
  • 2020/03/28 (Sat) 22:14:25
『完全復刻版 新宝島』(作・手塚治虫、原作構成・酒井七馬)
小学館クリエイティブ・2009年3月4日刊・B6判

手塚治虫のデビュー作は、少国民新聞(毎日小学生新聞)関西版に1946年1月1日から連載した『マアチャンの日記帳』で、その後も『珍念と京ちゃん』『AチャンB子チャン探検記』など何作か連載しているが、日本でまんがが隆盛を迎える源流となった伝説の(ほぼ)デビュー作は『新宝島』である。大阪の育英出版が1947年に刊行した。出版社も刊行月日も発行部数も手塚と酒井の制作関係も、今ではすべてが曖昧としていて、多くの研究がなされている(竹内オサムと中野晴行が有名。竹内は手塚寄り、中野は酒井寄りに見ている気がする)。とくに私は自説を持たないので、それらを読んでもらいたいが、ともあれ伝説の作品が復刻されたのは喜ばしいことである。この函入り「豪華限定版」には手塚がデビュー前の45年に描いたとされる『オヤヂの宝島』と47年3月1日刊の『タカラジマ』も復刻されている。

ごろねこの本棚【13】(2)

  • ごろねこ
  • 2020/03/29 (Sun) 22:17:10
『ジュンマンガ(1)』(西上ハルオ)
文進堂・1969年版・A5判
『新宝島』(手塚治虫)
講談社・1984年10月3日刊・B6判

1947年刊行の『新宝島』は描き版だったうえに、予想外にヒットしたため、様々なバージョンがあるらしいが、赤本だったためか、すでに60年代にはかなり高額の稀覯本古書としてしか知られてなかった。手塚治虫が絵もストーリーも完全に自分のものとは言えず、古く他愛もない作品となっていると復刻を嫌がっていたため、復刻もされなかった。それが69年に西上ハルオが『ジュンマンガ』という季刊の「マンガ研究叢書」を創刊し、その目玉として『新宝島』を全編トレスして復刻した。私はそのとき初めて見たのだが、確かに手塚自身が言うように「古く他愛もない作品」に見えた。できればリアルタイムで『新宝島』の衝撃を感じたかったが、何よりもわずか20年で『新宝島』から始まった戦後まんがの進化のスピードに驚かずにはいられなかった。ちなみに酒井七馬を主宰に仰いで創刊した『ジュンマンガ』は、奥付に「1969年版」としか記されていないので実際にいつ刊行されたかは忘れたが、69年の1月に酒井が故人となったためか、創刊号1冊で終わった。手塚自身が『新宝島』の刊行を認めたのは、「手塚治虫漫画全集」300巻の掉尾としてだった。ただし、全編描き直しの増補版になっている。酒井七馬の手の入った部分を取り除き、本来の構想を思い出しながら描いたということだが、それはともかく完全復刻版と比べてみると、その違いが面白い。

ごろねこの本棚【13】(3)

  • ごろねこ
  • 2020/03/30 (Mon) 22:16:20
『音無しの剣』(横山光輝)
中野書店・1981年7月25日刊・四六版(ハードカバー)
『音無しの剣』(横山光輝)
講談社・2003年4月23日刊・四六判(ハードカバー)

横山光輝はデビュー前に「探偵王」や「漫画と読み物」といった雑誌にまんがを投稿しており、すでに何作か掲載されている。まんが家としてのデビュー作は『音無しの剣』で、1955年3月10日に大阪の東光堂から刊行された。とはいえ、この頃は映画館の宣伝部に勤めながら趣味でまんがを描いていたと横山自身は語っている。中野書店から81年に「横山光輝初期作品集」として初期4作品が復刻されたが、デビュー作『音無しの剣』も含まれていた。他は描き下ろし単行本2作目の『白百合物語』と、すでにまんが家として活躍し始めて雑誌に掲載した作品を単行本化した『剣竜』『地獄の犬』である。
そして03年から10年にかけて、講談社から「横山光輝・愛蔵版初期作品集」が「少女編」を含め全9巻刊行され、その第1巻が『音無しの剣』だった。こちらは、造本や体裁はオリジナルのままではなく、「少年」56年2月号付録『竜車の剣』、4月号付録『白竜剣士』の2作が併録されている。ちなみに、この2作に55年「少年クラブ」夏の増刊号に載せた西部劇『テキサスから来た男』を加えて単行本化したものが『剣竜』であった。
ただ、残念ながら、これら2種の復刻本には欠点があった。カラー・ページが再現されていないことである。

ごろねこの本棚【13】(4)

  • ごろねこ
  • 2020/03/31 (Tue) 22:12:01
『音無しの剣』(横山光輝)
小学館クリエイティブ・2013年1月26日刊・四六判(ハードカバー)
『剣竜』(横山光輝)
中野書店・1981年7月25日刊・四六判(ハードカバー)

カラー・ページを含めて完全復刻された『音無しの剣』は、2013年の小学館クリエイティブ版である。
主人公は、高柳又四郎という剣士。実在した人物であり、相手と一度も刃を合わせることがなく勝ったので、彼の剣が、音がしないことから音無し剣法と呼ばれたのも事実である。それをモデルにして書かれた小説が中里介山の『大菩薩峠』で、主人公の机竜之助が「音無しの構え」の使い手である。机はニヒルな悪人だが、『音無しの剣』の又四郎は、自分の剣が邪剣とか魔剣と呼ばれることに悩みながら、他の剣士たちの挑戦を受ける正義の剣士である。注目するのは、又四郎の宿敵が「村雨次郎」であること。横山初期作品には欠かせない人物がデビュー作ですでに登場しているのだ。このキャラは、『鉄人28号』では村雨竜作となり、弟の村雨健次も登場する。『伊賀の影丸』の頃にはこの顔のキャラは古くなったのか登場しなくなったが、名前は村雨兄弟に、キャラとしては阿魔野邪鬼に受け継がれている。
『剣竜』は「横山光輝初期作品集」の復刻版。

ごろねこの本棚【13】(5)

  • ごろねこ
  • 2020/04/01 (Wed) 22:09:40
『二級天使』(石森章太郎)
虫プロ・1969年9月15日刊・四六判(ハードカバー函入り)
『火の鳥風太郎/二級天使』(石森章太郎)
桃源社・1976年2月10日刊・B6判

石森章太郎(後に石ノ森章太郎)は4コマまんがなどの投稿作品を別にすれば、「漫画少年」の1954年3月号に『狐のシッポをつけた兎の話』という絵物語が掲載されている。だが、まんが家デビュー作としては、55年1月号から10月号まで連載した『二級天使』となる。10月号が「漫画少年」の最終号であり、連載終了は予期せぬものであったらしい。したがって全8話で終わっているが(「一本足の兵隊」の巻が3回連載のため)、二級天使が一級天使になるために良いことを10回以上するという設定は完結していない。この作品はなかなか読むことができなかったのだが、「COM」68年6月号の別冊付録「ぐら・こん2」に3話が掲載された。そして、翌69年「石森章太郎選集」の第1巻に全話が収録されたのであった。この全8話の1作1作が違うジャンルの作品かのように斬新で実験的である。これは当時の編集部や投稿仲間が驚いたというのも頷ける。併録は、翌56年に「少女クラブ」に連載した『幽霊少女』。次に『二級天使』が収録されたのは、「冒険活劇大ロマン」シリーズで57年に刊行された石森初の描き下ろし単行本『火の鳥風太郎』と一緒であった。

ごろねこの本棚【13】(6)

  • ごろねこ
  • 2020/04/02 (Thu) 22:15:28
『二級天使』(石ノ森章太郎)
ふゅーじょんぷろだくと・2004年7月22日刊・B6判変
『二級天使』(石森章太郎)
角川書店・2006年2月22日刊・B6判

『二級天使』は「漫画少年」に連載しただけでなく、じつは続編が描かれている。ふゅーじょんぷろだくと珈琲文庫の『二級天使』は「初の完全収録」として続編2作も収録している。「なかよし」1965年お正月増刊号に掲載された『新2級天使』と、「ヤングマガジン」80年12月15日号に掲載された『二級天使・25年目のPARTⅡ』である。『新2級天使』は天使の力を3回使って一つのよいことをすれば1級天使になれるという話。『25年目のPARTⅡ』は一級を目指す二級天使が、同じく一級を目指す二級悪魔と出会うというドタバタ・コメディ。そして「石ノ森章太郎萬画大全集」版には、それに加えて、じつは二級天使が登場するもう1作『くちびるに歌を心にマンガを』(64年「別冊明星」)が収録されている。他に『狐のシッポをつけた兎の話』や、55年に「漫画少年」に掲載された『河童はほんとにいるだろうか?』『デカチビ日記』、また56年発表の『はりきりデカちゃん夏休み日記』(「少年クラブ」)、『黒猫』(「少女クラブ」)など、本当に最初期の作品ばかりを収録している。

ごろねこの本棚【13】(7)

  • ごろねこ
  • 2020/04/03 (Fri) 22:21:27
『UTOPIA最後の世界大戦/天使の玉ちゃん』(藤子・F・不二雄/藤子不二雄A)
小学館・2012年9月30日刊・A5判

藤子不二雄もデビュー前にいろいろと投稿していたが、プロとしてのデビュー作は「毎日小学生新聞」に連載した4コマまんがの『天使の玉ちゃん』である。同紙には手塚治虫が『マアちゃんの日記帳』などの4コマを連載していたが、それが途切れ、4コマまんがが載らない時期が続いていたという。そこで、高校生だったA(安孫子素雄)とF(藤本弘)が『天使の玉ちゃん』を10本描いて投稿し、それが採用されたものである。投稿して忘れた頃に原稿料が郵便為替で送られてきて、採用を知ったということで、その10本だけの連載かと思ったが(A氏もそのように言っていた)、初めてきちんとした形で復刻され、全部で26本だとわかった。1951年12月16日から52年4月4日までに26本掲載されており、一応4コマまんがなのだが、話はずっと続く形になっている。作者名は「あびこもとお ふじもとひろし」という本名になっている。52年に「冒険王」に掲載された『西部のどこかで』という作品から「足塚不二雄」という名を使い始め、最初の描き下ろし単行本(共作作品としては最後でもあった)が『UTOPIA最後の世界大戦』だった。

ごろねこの本棚【13】(8)

  • ごろねこ
  • 2020/04/04 (Sat) 22:09:03
『UTOPIA最後の世界大戦』(藤子不二雄)
中央公論社・1991年2月3日刊・B6判
『UTOPIA最後の世界大戦』(藤子・F・不二雄/藤子不二雄A)
小学館クリエイティブ・2011年8月30日刊・B6判函入り

『UTOPIA最後の世界大戦』の最初の復刻は1981年に名著刊行会の「日本名作漫画館」である。オリジナルの表紙は大城のぼるが描いていたので、その復刻の表紙にF氏が描き下ろした新たなカバーが付いている。次の復刻が、「藤子不二雄ランド」の全301巻の完結巻だった。(7)の「藤子・F・不二雄大全集」版のように全編2色カラーを復刻せず、1色なのは仕方ないが、F作品の『ユリシーズ』(「たのしい三年生」57年)と『おやゆびひめ』(「幼年クラブ」55年)が収録され、FFランドで連載していた新作『タカモリが走る』(A)、『チンプイ』(F)も掲載されている。そして、F大全集版が出る前年に、すでに小学館クリエイティブから完全復刻版が刊行されていた。じつは『UTOPIA最後の世界大戦』のオリジナル本には、半分は『覆面団』という作者無記名の作品が収録されており、それもそのまま復刻しているのだ。もちろん『覆面団』は藤子作品ではないので、今までは復刻されなかったのだが、これは単行本を完全復刻しているわけである。後に同じ出版元の鶴書房から『覆面団』だけ独立して刊行されたときは「足塚不二雄」名義だったが、富士見出版社から「中島利行」名義で刊行され、中島が作者だと判明した作品である。ともあれ、この作品は、自分たちで描いた絵ではない絵が表紙になり、1色だったものを誰かの彩色で2色にされ、ラストに他人が描いたコマを加えられ、他の作品と抱き合わせて出版されたという、ある意味、藤子両氏にとって嬉しいながらも単純には喜べない単行本になっていたのだろう。

ごろねこの本棚【13】(9)

  • ごろねこ
  • 2020/04/05 (Sun) 22:16:12
『復讐のせむし男』(千葉徹弥)
青林堂ネットコミュニケーションズ・2003年6月19日刊・B6判
『拳』(遠藤喜代志)
青林堂ネットコミュニケーションズ・2002年7月4日刊・新書判

ちばてつやのデビュー作は『復讐のせむし男』で、1956年6月10日に日昭館書店から刊行された。殺人の濡れ衣を着せられて刑務所に入ったせむし男が、脱獄し真犯人に復讐しようとする。また真相を突き止め、復讐をやめさせようとする少年探偵の活躍を描く。最終的に皆善人なのが、いかにもちば作品らしい。このデビュー作のタイトルだけは知っていたが、長らく読む機会がなかった。だが、03年の新聞記事でオンデマンドで復刻されることを知り、サイトを見ると、すでにちばてつやの初期作品が他に7作も復刻されていたので、まとめて購入したのだった。現在でもその7作は形を変えて出ており購入可能だが、『復讐のせむし男』だけはリストから消えている。この作品だけ判型が違い、カラーページも16ページあるなど特別な復刻だったのだろうか。あるいはタイトルが差別用語になると判断されたのだろうか。
さて、その次に刊行された作品が何なのかは刊行年月日不明のものもあってはっきりわからないが、第2作として執筆したのは熱血空手まんがの『拳』である。まんが家の自覚をもってじっくり取り組んだ作品で、かなり上達している。だが、日昭館が倒産し、後に『泣き笑い百面相』などを描いた金園社の先輩まんが家に預けておいたら、58年の正月に題名と作者名を変えて本屋で売っているのを見つけたという。名義が違うのはそういう理由である。それを聞いた母親がちばてつやを連れて出版社へ押しかけると、わずかなお金を支払ってくれたが、それでこの出版社とは縁を切ったという。なお、両作とも表紙はちばてつやが描いたものではない。

ごろねこの本棚【12】(1)

  • ごろねこ
  • 2020/03/08 (Sun) 22:15:10
『新入門百科 まんが家修行 まんが道』(藤子不二雄)
秋田書店・1972年11月30日刊・A5判ハードカバー函入り

藤子不二雄Aが、Fと別れる前の作品。藤子Aの作品にも好きな作品は多いが、結局一番好きなのは『まんが道』かも知れない。Aがモデルの満賀道雄が、Fがモデルの才野茂と出会い、まんが家となるという半自伝的な作品。最初は「少年チャンピオン」の1970年8号から72年30号まで連載した「マンガ入門講座」という4ページのコーナーの中の2ページの『マンガ道』というまんがだった。秋田書店は入門書を多く出しており、手塚、石森に続くまんが入門書を刊行するつもりだったのかも知れない。その一部として自分たちの経験を語って、どういうふうにまんが家を目指したかを教えたかったのだろう。まえがきに「毎週2ページ連載の大長編まんが」と書いているが、単行本化されたのはこの2ページ連載のまんがのほうであり、後に実際に大長編まんがとなることは、まだ作者も知らなかった。まんが好きの満賀道雄が転校した小学校で才野茂と出会い、一緒にまんがを描き始め、高校最後の夏休みに手塚治虫の家を訪問するところまでが描かれている。最後に井上靖の『あすなろ物語』の一節が引用してあることから、この部分は後に『まんが道/あすなろ編』と名づけられた。

ごろねこの本棚【12】(2)

  • ごろねこ
  • 2020/03/09 (Mon) 22:07:29
『まんが道(1)(19)』(藤子不二雄)
少年画報社・(1)1978年4月15日、(19)82年7月15日刊・新書判

2ページ連載だった『マンガ道』の続きは、ちゃんとした連載まんが『まんが道』として「少年キング」に1977年から82年まで連載された。「あすなろ編」のラストの手塚家訪問から始まり(内容は重複している)、二人で上京し、まんが家デビューしてトキワ荘で過ごす日々が描かれている。実際の初期藤子作品を再現したりしているが、フィクションを織り込んでおり、必ずしも実話というわけではないようだ。ただ、この全19巻の『まんが道』がこの作品の本体といえると思う。残念ながら掲載誌「少年キング」の休刊によって連載が終了したため、ラストは、同志のまんが家たち(寺田、石森、赤塚、つのだなど)とトキワ荘を出たとき、夜空にUFOを目撃するところで終わり、「未完」と書かれている。なお、この『まんが道』は後に「立志編・青雲編」と名づけられたらしいが、このヒットコミックスでは編名は記されておらず、どこまでが「立志編」で、どこからが「青雲編」なのか、私は知らない。

ごろねこの本棚【12】(3)

  • ごろねこ
  • 2020/03/10 (Tue) 22:13:13
『第二部 まんが道・春雷編(1)(2)』(藤子不二雄)
中央公論社・(1)1987年7月31日、(2)88年5月16日刊・B6判

「少年キング」の休刊と共に未完になっていた『まんが道』は1986年の8月号で通巻100号を迎えた「コロコロコミック」の記念に『まんが道スペシャル』として復活した。これは1回限りの読み切り作品だった。だが、84年に創刊した「藤子不二雄ランド」連載の新作まんが(最初は『ウルトラB』だった)として86年115号から188号まで、「少年キング」版のラストに直接続く『まんが道・春雷編』が描かれた。鈴木伸一がアニメーターになるためにトキワ荘から出て行き、原稿を落としそうになった満賀が初めて講談社別館にカンヅメになるエピソードまでが描かれている。「春雷編」というのは連載中から表記されていて、全2巻。また、86年の11月にはNHK銀河テレビ小説で『まんが道』はドラマ化され、そのことが連載再開の理由だったのかも知れない。ドラマは87年の7月に続編『まんが道・青春編』も放送された。

ごろねこの本棚【12】(4)

  • ごろねこ
  • 2020/03/11 (Wed) 22:07:54
『愛…知りそめし頃に…/満賀道雄の青春(1)(12)』(藤子不二雄A)
小学館・(1)1997年3月1日、(12)2013年7月3日刊・A5判

「春雷編」も内容としては未完だったせいか、「ビッグコミックオリジナル」の1989年12月増刊号と90年4月増刊号に『愛…知りそめし頃に…』というタイトルで、『まんが道』の続編の読み切り2編が描かれた。今までは満賀道雄と才野茂の二人が主人公だったが、この作品から満賀が主役になり、恋愛などの青春を描くつもりだったと思われる。そして95年の12月増刊号から連載となる。「ビッグコミックオリジナル増刊号」は隔月刊だったので、かなりのスローペースだったが、2013年5月増刊号まで連載は続き、単行本は全12巻となった。主人公は満賀になったものの、実際には今までの『まんが道』とそれほど違いはなく、帯に書かれている『まんが道・青春編』でタイトルはよかったのではないかと思われ、作者もそう思ったようだ。「藤子不二雄」は88年にAとFに別れるので、これが初のA名義の『まんが道』となる。F氏が96年の9月に亡くなった際には連載を1回休み、『さらば友よ』とF氏を追悼する作品を描き、2巻に収録された。また、各巻の巻末付録として、本編に出てくる初期作品の復刻やデータ資料が収録されているのも楽しい。物語は満賀たちが代表作ともいう作品を生み出し、手塚治虫からライバルと認められたところで終わる。

ごろねこの本棚【12】(5)

  • ごろねこ
  • 2020/03/12 (Thu) 22:11:36
『ペンだこパラダイス(1)(5)』(山本おさむ)
双葉社・(1)1994年5月12日、(5)95年3月28日刊・B6判

『まんが道』ほど長編は珍しいが、まんが家が自伝的なまんがを描いた作品は多くある。その中でも、熱量からいうと、この『ペンだこパラダイス』が面白い。「漫画少年青春グラフティー」とあるように、まんが少年の中学時代を中心に描く。最終話では高校時代をすっ飛ばし、高校を卒業してまんが家を目指して上京するところを描いている。学校、友情、恋愛などは『まんが道』よりもドラマチックでリアル。もっともどの程度まで実話なのかはわからないが、少なくとも「まんが少年」の部分は作者の実体験に即したものだろうと、その時代背景からわかる。投稿作品はついに入選せず、一緒にまんがを描いていた仲間はみなまんがから離れ、ただ一人で上京する。結局、作者はまんが家として成功してはいるが、藤子Aの『まんが道』のエリート感と比べると、当時の等身大のまんが少年の姿が見える。全5巻。

ごろねこの本棚【12】(6)

  • ごろねこ
  • 2020/03/13 (Fri) 22:09:25
『カックン親父(3)(6)』(滝田ゆう)
東京漫画出版社・(3)1959年6月20日刊、(6)刊行年月日不明・B6判ハードカバー

滝田ゆう作品では、玉ノ井を舞台にした『寺島町奇譚』が有名であり、名作だと思う。その作品を筆頭に文芸風な味わいが滝田作品の魅力だが、それ以前の代表作が『カックン親父』だった。『カックン親父』は初めオリジナルの単行本としてこのB6判ハードカバーで刊行された。第1巻は、巻数無表記で続巻が出るとは予定していなかったようだ。だが、予想以上にヒットして、第2巻から巻数が表記され、描き下ろし単行本として、おそらくここに挙げた第6巻まで刊行されたのではないかと思われる。第7巻は見たことがない。6巻の奥付に刊行年の記載がないのではっきりしないが、59年か60年頃から東京漫画出版社は「爆笑ブック」というアンソロジー誌を月刊で刊行し、そこに『カックン親父』も掲載し始めた。当初の看板作家は武内つなよしだったが、数年後に「新爆笑ブック」となると、滝田ゆうと『カックン親父』が、看板作家と作品になっていた。

ごろねこの本棚【12】(7)

  • ごろねこ
  • 2020/03/14 (Sat) 22:09:54
『カックン親父(5)(32)』(滝田ゆう)
東京漫画出版社・刊行年月日不明・A5判

60年代になって、『カックン親父』の単行本はA5判になった。当時の潮流としてまんが単行本はB6判からA5判へと移行していったのだ。そのときにまた巻数が「第1集」に戻ったが、旧第1集と内容は異なっている。少なくとも初期のうちは「爆笑ブック」掲載の『カックン親父』と並行して単行本も描いており、検証はしていないが、「爆笑ブック」版を集めて単行本にしていたわけではない。「爆笑ブック」は(「新爆笑ブック」になっても)毎月16日に刊行されていたが、『カックン親父』も毎月22日に刊行されていた。月刊ではなくなった後期には、もしかしたら「新爆笑ブック」版を単行本に収録していたかも知れない。A5判版の『カックン親父』は私が持っている中で最も号数が大きいのは「32集」だが、それ以上の号数もあった。また号数がなく「新春号」とか「特集号」といったものもあったが、そちらに「爆笑ブック」版を収録していたのかも知れない。全部で何冊あったのかは不明だが、滝田ゆう自身が「B判、A判合わせて全五十巻余り」と書いているので、50冊以上あったのだろう。

ごろねこの本棚【12】(8)

  • ごろねこ
  • 2020/03/15 (Sun) 22:10:03
『カックン親父(1)(6)』(滝田ゆう)
東京漫画出版社・(1)1969年8月20日、(6)70年5月30日刊・新書判

主に少女まんがを描いていた滝田ゆうが『カックン親父』で家庭まんがやギャグまんがを描くようになり、さらに1967年に「ガロ」に『あしがる』を発表し、68年には『寺島町奇譚』が始まった。その頃、まんが出版界は新書判コミックスがブームになりつつあり、東京漫画出版社も刊行し始めていた。ロマンス・コミックスという少女まんがシリーズだが、スリラーが多かった。そんな中、とくに何のレーベルもなく、すでに過去の作品となっていた『カックン親父』が刊行された。じつは第1巻には巻数表記はない。が、思ったより売れたのか、第2巻が刊行され、「第3巻も引き続き発行されます」と書かれている。第4巻の広告には、「滝田ゆう傑作選集」と表記され、『カックン親父』(全10巻)とある。だが、残念ながら、第6巻までしか刊行されなかった。

ごろねこの本棚【12】(9)

  • ごろねこ
  • 2020/03/16 (Mon) 22:10:57
『カックン親父(1)(2)』(滝田ゆう)
ひばり書房・共に1975年6月25日刊・新書判

東京漫画出版社版から5年経って、ひばり書房から新書判コミックス全2巻が刊行された。東京漫画出版社版は50巻余りある単行本から抜粋して、作者か編集者が選んだと思われる話(4コマはそれぞれのまとめ方で1話扱い)が6巻に68話収録されている。これは全話のごく一部にすぎないが、では、ひばり書房版がオリジナル本から新たに選び直したのかというと、残念ながらそうではないようだ。ひばり書房版には2巻で21話が収録されているが、東京漫画出版社版の第4巻までにすべて収録されている話である。
カックン親父の名は「勝勝(かつまさる)」で神田生まれの江戸っ子なのだが、あまり江戸っ子らしさは感じない。ところで「カックン」というのは何だろう。「カックン」という語では「膝カックン」が思い出されるが、これは人の「ひかがみ=膝の後ろ」を膝で突くと、膝の力が急に抜けてしまうことをいう。ランナーなどにも俗に「カックン病」というのがあって、走っているときに突然脚の力が抜けて走れなくなる症状をいうらしい。そういえば私も、ときどき歩いているときに急に膝に力が入らなくなることがある。それでまだ転んだことはないが、ちょっと危ない。それはともかく、「カックン」は脚や顎や体全体から力が抜けるようなときの擬態語と思っていいだろう。精神的な面も含めると「がっかり」に近いのかも知れない。短気な「カックン親父」がカックンとなるまんがなのか、「カックン親父」を見て読者がカックンと脱力するのか、どちらの意味かと思って読み直してみたが、両方の要素があるようだ。

ごろねこの本棚【12】(10)

  • ごろねこ
  • 2020/03/17 (Tue) 22:10:03
『ミーコちゃん(2)(3)』(塩田英二郎)
トツパン・(2)1954年11月1日、(3)1955年6月5日刊・A5判ハードカバー

前に読売新聞の朝刊に連載された『轟先生』を紹介したが、『ミーコちゃん』は読売新聞の夕刊に1952年6月1日から61年12月29日まで連載された。およそ9年半だが、私はリアルタイムでは見ていない。だが、ミーコちゃんのキャラクターに見覚えがあるのはなぜなんだろう。内容や脇役の絵は、たとえば『サザエさん』や『フクちゃん』などとそれほど違いはないのだが、ミーコちゃんとママが、当時の言い方をすると「モダン」であり「ハイカラ」である。塩田英二郎というと、1949年の「おもしろブック」創刊号から連載された『コックリくん』が代表作だと思う。オール4色の連載で全3巻の単行本も出たが、筑摩書房の「少年漫画劇場2冒険活劇」に第1巻が1色で復刻され収録されている。ピノキオのような人形のコックリくんの冒険を描いているが、『ミーコちゃん』より前の作品なのに、まるで欧米の作品のようにもっと「ハイカラ」なことに驚く。オール4色での復刻を期待していたが、いまだに実現していない。なお、『ミーコちゃん』は1巻と2巻は同時発売で、3巻まで持っているが、何巻まで出たのか不明である。

ごろねこの本棚【12】(11)

  • ごろねこ
  • 2020/03/18 (Wed) 22:15:02
『劇画ブルース・リー』(中城健・他)
勁文社・1974年9月1日刊・B6判
『劇画ブルース・リー1/ドラゴン怒りの鉄拳・ドラゴン危機一発』(本宮プロ)
朝日ソノラマ・1974年11月12日刊・新書判

日本でブルース・リー主演の『燃えよドラゴン』が公開されたのは1974年で、その前年にブルース・リーはすでに故人となっていたが、映画は大ヒットし、何よりもブルース・リー人気が凄かったのは当時を経験した人なら誰でも知っているだろう。私も『燃えよドラゴン』をロードショーで見たが、私はストーリー主義なので、そのときは評判ほどでもないB級作品としか見なかった。ただそんな私でも、ブルース・リーの技と奇声、鬼気迫る表情などはまた見たくなる魅力を感じた。で、当時、『燃えよドラゴン』に続いて74年には過去作『ドラゴン怒りの鉄拳』『ドラゴン危機一発』も公開され、同年のうちに『劇画ブルース・リー』が刊行された。『怒りの鉄拳』は中城健、『危機一発』は鳴島生、『燃えよドラゴン』は北野英明が描いており、他に林ひさおの『ブルース・リー物語・死亡遊戯』が収録されている。これは後に残されたフィルムから制作された『死亡遊戯』ではなく、伝記まんがである。また、本宮ひろ志の本宮プロからも『劇画ブルース・リー』が2冊刊行された。2巻は『燃えよドラゴン』である。

ごろねこの本棚【12】(12)

  • ごろねこ
  • 2020/03/19 (Thu) 22:32:13
『ラッキー9・宇宙よりの使者の巻/ブラックビクトリー団との対決(その二)』(貝塚ひろし)
みな書房・共に刊行年月日不明・B6判

貝塚ひろしは1960年代から70年代にかけて少年まんが界の中央にいたように思う。野球まんがが多かったが、ヒット作も多く、いかにも少年まんがの王道といった作品を描いていた。自費で「まんがマニア」という同人誌を出し、新人の育成にも関心があったようだ。そのわりに個人の選集とか作品集とかに縁がなく、多数のまんが家たちの作品を集めるようなシリーズやアンソロジーに収録されることもほとんどない。ただ一度だけ「貝塚ひろし全集」と名付けられた本が出たことがあった。その第1巻と第3巻がこれ。野球もののようなSFの『ラッキー9』が収録されている。科学者で野球選手だった谷がデビュー戦で突如球場の上空に現れた宇宙船にさらわれ、その10年後、谷選手の息子が平和の使者として地球にやって来るというストーリー。「希望の友」に1965年から66年に1年間連載された。第1巻は「第1話・宇宙よりの使者の巻」と「第2話・ブラックビクトリー団との対決」、第3巻は「第2話」の続きと「第3話・くたばれモーズ団」と『ミラクルA(エース)』の番外編「大造の10番打者」を収録。

ごろねこの本棚【12】(13)

  • ごろねこ
  • 2020/03/20 (Fri) 22:12:48
『ラッキー9・スタープレイヤー誘拐事件の巻』(貝塚ひろし)
『龍のペナント』(貝塚ひろし)
みな書房・共に刊行年月日不明・B6判

「貝塚ひろし全集」はこの4冊ですべて。かなり長編の作品も多いので本当の全集は無理だとしても、全20巻ぐらいの選集を、どこかの大手出版社から出してほしかった。あるいは貝塚作品は短編に佳作が多いので、全5巻ぐらいの短編集なら出せたんじゃないかと思うのだが。そのへんをカバーしてくれているのが、アップルBOXクリエートの「貝塚ひろし漫画選集」で、現在30巻以上刊行されている。『ラッキー9』は全集4巻で「第4話・スタープレイヤー誘拐事件の巻」を収録。『龍のペナント』が全集2巻。「朝日小学生新聞」に1968年に連載した作品。親と不和で問題ばかり起こしていた少年少女が、親や先生たちと心を通わせ、リトルリーグの球団を作るところまで。「第一部・完」となっているが、無理やり終わらせた感は否めない。67年に「少年サンデー」4月増刊号に掲載された短編『野球の神さま』を収録している。

ごろねこの本棚【12】(14)

  • ごろねこ
  • 2020/03/21 (Sat) 22:06:22
『ハンティング・ドッグ』(谷口ジロー)
壱番館書房・1982年3月10日刊・B6判
『可愛い死神』(谷口ジロー)
廣済堂出版・1985年6月20日刊・B6判

これは同じ本。82年版を85年に再刊した。近未来を舞台に伊達力丸、通称リカオンと呼ばれる私立探偵の活躍を描く。「エロトピアデラックス」1980年6月創刊号から82年2月号まで連載した。単行本には7話が収録されているが、連載期間からすると、単行本未収録話があるのかも知れない。「可愛い死神」というのは収録された第3話のタイトル。旧版の第2話「野良犬たちの苦い夜」、第7話「犯るか殺られるか!」のタイトルは、新版では「野獣たちの苦い夜」「殺るか殺られるか!」に改められている。当時、作者は関川夏央原作の『事件屋稼業』などハードボイルドはすでに何作か描いていたが、メビウス(=ジャン・ジロオ)に傾倒していたので、そのSFハードボイルド『ロングトゥモロウ』に刺激を受けて、始めてのSFに挑戦したとのこと。また、この頃、映画『ブレードランナー』が公開され、作者は頻繁に映画館に足を運んだそうだが、日本公開は82年7月なので、この作品にその影響は及んでいないはずである。『ブレードランナー』の公開がもう少し早くて、未来都市の描写などにその影響が窺われるような作品も見てみたかったと思う。

ごろねこの本棚【12】(15)

  • ごろねこ
  • 2020/03/22 (Sun) 22:18:46
『イカル』(漫画・谷口ジロー、原作・メビウス)
美術出版社・2000年11月30日刊・B5判

メビウスに魅了され、影響を受けていた谷口ジローは、メビウス原作の作品を描いている。それがこの作品で、1997年「週刊モーニング」に12回にわたって連載された。生まれながらに飛行能力を持つ男の話で、暗号名はイカル。生まれたときから政府の研究所に隔離され20年間を過ごしてきた。そのイカルが、教育係を務める人類学者の雪子に恋をし、研究所から脱出する。イカルと雪子が抱き合って飛翔するところで、「第一部・完」となっている。長年閉じ込められていた檻から飛び立つ終わりは悪くはないが、そこまでの伏線は何一つ回収されていない。圧倒的な画力で読ませはするが、ストーリーがどうなるかはまったくわからない未完の作品である。

ごろねこの本棚【12】(16)

  • ごろねこ
  • 2020/03/23 (Mon) 22:10:38
『事件屋稼業』(関川夏央&谷口ジロー)
双葉社・1981年5月13日刊・B6判
『新・事件屋稼業』(関川夏央&谷口ジロー)
日本文芸社・1988年1月25日刊・B6判

谷口ジローの初期の代表作にしてハードボイルドの代表作というと、『事件屋稼業』である。谷口ジローは大勢の原作者と作品を作っているが、関川夏央の場合だけ「原作」ではなく「共作」と表記している。関川とのコンビで多くの作品を描いているが、二人で作り上げたという意識が強いのだろうか。『事件屋稼業』は1980年に「漫画ギャング」に1月2日号から4月16日号まで連載した。全8話である。ハードボイルドといっても、『ハンティング・ドッグ』の現代版のような、あるいはハメットやチャンドラーのような作品とは違う。70年代以降の、日本では一時期、「ネオ・ハードボイルド」と呼ばれていた作風に近く思える。マイクル・Z・リューインやビル・プロンジーニなどのハードボイルドである。つまりシリアスでシニカルでセンチメンタルなだけでなく、コミカルでプチブル的な要素が強いのである。
『新・事件屋稼業』は単行本のときの命名で、80年9月に「漫画ゴラク」に1話載り、82年から『事件屋稼業』としてシリーズ連載していた。

ごろねこの本棚【12】(17)

  • ごろねこ
  • 2020/03/24 (Tue) 22:20:23
『新・事件屋稼業(2)(6)』(関川夏央&谷口ジロー)
日本文芸社・(2)1994年2月25日、(6)94年3月10日刊・B6判

「漫画ゴラク」の『事件屋稼業』がどのくらいのペースで連載していたのか知らないが、『新・事件屋稼業』の巻数無表記の単行本が出て、6年経って94年に連載が終了し、2巻から6巻までが立て続けに刊行された。主人公の私立探偵・深町丈太郎は「漫画ギャング」で連載が始まったときは31歳で、終了時には47歳になっている(一応発売日の79年から94年までの計算。誕生日もどこかに書いてあったと思う)。谷口ジローのオリジナルのハードボイルドや探偵ものはわりと孤独な主人公が多いが、関川夏央が深町を取り巻く世界を多方面から構築しているせいか、深町の元妻や娘、大家や刑事や経済ヤクザなど多彩な登場人物たちも、この作品の魅力になっている。

ごろねこの本棚【12】(18)

  • ごろねこ
  • 2020/03/25 (Wed) 22:12:22
『事件屋稼業』(関川夏央+谷口ジロー)
双葉社・1986年5月28日刊・A5判
『事件屋稼業1』(関川夏央・谷口ジロー)
双葉社・1996年7月20日刊・A5判

『事件屋稼業』は81年版の再刊だが、A5判になり、特別描き下ろし『探偵SLEUTH-HOUUND』と関川の文章が追加されている。『探偵SLEUTH-HOUUND』は深町丈太郎の娘カオリが丈太郎を題材にして撮った映画の体になっている。そして96年に『事件屋稼業』の決定版が出る。全6巻で、「1」は『事件屋稼業』、「2」から「6」までは日本文芸社『新・事件屋稼業』の1巻から5巻までを収録している。各巻、関川が文章を書き下ろしているので、本編だけではわからない情報も知ることができる。『事件屋稼業』を読むなら、この全6巻を薦めたい。
ところで、『事件屋稼業』はOVで2作、TV2時間ドラマで2作、映像化されている。OVは見てないが、TVのほうは2作とも見た。深町を演じるのは寺尾聡で、イメージはだいぶ違った。

ごろねこの本棚【12】(19)

  • ごろねこ
  • 2020/03/26 (Thu) 22:21:43
『片うで狼』(ありかわ・栄一)
東京トップ社・1961年9月5日作・A5判
『片手狼』(篠原とおる)
文洋社・1962年10月作・A5判

まんがの世界のハードボイルドというと、やはり貸本劇画から始まったのではないかと思う。本当のハードボイルドになっていたかどうかはともかく、探偵や刑事やギャングやヤクザが主人公で、ガン・アクションが見せ場のまんがは山ほどあった。「狼」たちがうじゃうじゃといたのである。『片うで狼』はありかわ栄一(園田光慶)の「ハードボイルド・シリーズ」第9巻。銀行ギャングの男が兄貴分に裏切られ、右腕を潰されるという話。最後は殺しをやめて女のために自首しようとするが、刑事に射殺されてしまう。「ハジキが当たるクイズ」というのがスゴイ。「あなたにドイツ製のルガーをあげまス!!」と書いてあるが、モデル・ガンとは一言も書いていない。『片手狼』は篠原とおるの「暗黒街シリーズ」第3巻。人気ジャズ・ピアニストだった男が酒と博打で身を持ち崩し、片腕の殺し屋となっている話。抗争中の組に雇われるが、知り合った敵の組の父娘を助けようとして死ぬ。だいたい主人公は死ぬものだった。

ごろねこの本棚【12】(20)

  • ごろねこ
  • 2020/03/27 (Fri) 22:12:33
『ひとり狼』(佐藤まさあき)
東京トップ社・1961年刊・A5判
『孤独の狼』(下元克己)
東京トップ社・1967年頃刊・A5判

『ひとり狼』は「日本拳銃無宿・影男シリーズ」の単行本第1作。佐藤まさあきの代表作とも言える「影男」は、1960年に日の丸文庫のアンソロジー誌「影」の50集記念号に第1作『無音拳銃』が掲載され、誕生した。何作か描かれた後、東京トップ社で単独の単行本として刊行された。このシリーズでは10巻まで出ている。その後も「影男」シリーズは様々に描かれ、多く単行本化されている。それはいつか紹介しよう。この『ひとり狼』の意外なところは、影男がギターを弾きながら登場するところで、59年公開の小林旭主演の『ギターを持った渡り鳥』の影響を受けていることだ。ちょっと後の影男のイメージと違う。なお、表紙には「日本拳銃無頼・影男」と表記されている。
『孤独の狼』は「青春群像シリーズ」の第1作。下元克己は第一プロのアンソロジー誌「青春」に多く作品を発表していたが、その21集から「青春群像シリーズ」を描き始め、第1作は『やーなカンジ!』という作品だった。そして30集に「青春群像シリーズ」第9作『孤独の狼』が載っている。この単独単行本版も登場人物は同じだが、話はかなりスケールアップしている。下元克己の描く代表キャラに、大槇伸司、五里一平、五木武利がいるが、孤独の狼は大槇、その友人に五里が出ている。第2作『狂った奴ら』の予告では五木(ゴキブリ)が主役らしいが、貸本最末期でもあり第2作が刊行されることはなかった。

ごろねこの本棚【11】(1)

  • ごろねこ
  • 2020/02/17 (Mon) 22:08:17
『伊賀の影丸(4)』(横山光輝)
東邦図書出版社・1962年11月30日刊・A5判
『伊賀の影丸・正雪の巻4』(横山光輝)
東邦図書出版社・1964年刊行月日不明・A5判

私が子供の頃、一番好きなまんがは『伊賀の影丸』だった。掲載誌「週刊少年サンデー」の発売日が待ちきれないほど熱中したまんがは、後にも先にもこの作品しかない。
1960年に「日の丸」5月号で『少年ロケット部隊』が終了し、10月号に11月号から新連載となる『忍者影丸』の予告が載った。だが、『忍者影丸』は始まることはなく、翌61年「少年サンデー」4月2日号から『伊賀の影丸』の連載が始まった。その事情については語られていないと思うが、「少年」の『鉄人28号』が大ヒットしていたので、「日の丸」のほうが時代劇の連載には難色を示したのかも知れない。ともあれ、『伊賀の影丸』は、映画や小説で流行になっていた「忍者もの」を少年まんがの世界にまで持ち込み、ブームを起こしたのだった。
最初の単行本は、東邦図書の「横山光輝漫画全集」だった。1、2巻は『夜光島魔人』、3巻から6巻までが『伊賀の影丸』(この段階で「若葉城の巻」という章名は付いていなかった)、7巻から11巻までが『伊賀の影丸・正雪の巻』で、11巻で終わった。

ごろねこの本棚【11】(2)

  • ごろねこ
  • 2020/02/18 (Tue) 22:09:05
『月刊別冊少年サンデー・伊賀の影丸特集・由比正雪の巻第2回』(横山光輝)
小学館・1965年7月1日刊・B5判

季刊だった「別冊少年サンデー」が月刊となり、毎号、特集として連載まんがの総集編を載せる形に変わったのは1964年の11月号からだった。その最初が『伊賀の影丸』で、11月号から65年1月号までの3冊に「若葉城のひみつの巻」を載せている。この章名は後に「若葉城の巻」に変更する。続いて、65年6月号から9月号までの4冊が第2部の「由比正雪の巻」だが、その次は65年12月号と66年1月号に本来第5部に相当する「半蔵暗殺帳の巻」を載せ、66年8、9月号に第3部の「闇一族の巻」、67年2、3月号に第6部「地獄谷金山の巻」を載せた。「別冊少年サンデー」版の『伊賀の影丸』はこれですべてであり、第4部「七つの影法師の巻」や7部以降は存在しない。

ごろねこの本棚【11】(3)

  • ごろねこ
  • 2020/02/19 (Wed) 22:07:31
『伊賀の影丸・闇一族(上)かげろうの巻/(下)ナナフシの巻』(横山光輝)
小学館・共に1968年9月10日刊・新書判

『伊賀の影丸』の最初の新書判コミックスはゴールデン・コミックスだった。これは最も古い新書判コミックスのダイヤモンド・コミックス(コダマ・プレス)に5日遅れての誕生(1966年5月15日)で、老舗なのだが、『カムイ外伝』に始まり『カムイ伝・第二部』で終わるという白土三平のためのコミックスだったといっても過言ではない。『伊賀の影丸』は「若葉城の巻(上下)」が67年の8月、「由比正雪の巻(上中下)」が68年6月、そしてこの「闇一族の巻」が出た。
東邦図書版ですでに連載時のダブったコマを整理したりページを整理したりして単行本化していたが、ゴールデン・コミックス版では、さらにコマを整理・編集して、小見出しをつけている。また「若葉城の巻」では、服部半蔵の顔を変えて、他の巻の半蔵の顔と同じにしている。

ごろねこの本棚【11】(4)

  • ごろねこ
  • 2020/02/20 (Thu) 22:08:30
『伊賀の影丸(1)七つの影法師の巻/(8)地獄谷金山の巻』(横山光輝)
秋田書店・(1)1969年3月31日、(8)1969年11月5日刊・新書判

ゴールデン・コミックスは「闇一族の巻」で刊行が止まってしまったので、第4部「七つの影法師の巻」からは、秋田書店のサンデー・コミックスで刊行された。ただし、連載順の収録ではない。
第1巻・第4部「七つの影法師」~、第2巻・~第5部「半蔵暗殺帳」~、第3巻・~第7部「邪鬼秘帳」~、第4巻・~「邪鬼秘帳」、第5巻・第9部「影丸旅日記」、第6巻・第8部「土蜘蛛五人衆」~、第7巻・~第6部「地獄谷金山」、第8巻・~「地獄谷金山」。なお第8巻には中編『ムササビ』を併録。
なぜ、第6部「地獄谷金山」を最後に持ってきたのか。第7部「邪鬼秘帳」と第8部「土蜘蛛五人衆」は内容的につながっているのに、なぜ間に第9部「影丸旅日記」を入れたのか。理由がわからない。

ごろねこの本棚【11】(5)

  • ごろねこ
  • 2020/02/21 (Fri) 22:09:46
『伊賀の影丸(9)若葉城の巻その一/(15)闇一族の巻その二』(横山光輝)
秋田書店・(9)1976年2月28日、(15)1976年8月5日刊・新書判

サンデー・コミックスの『伊賀の影丸』は全8巻かと思っていたら、6年後に9巻から15巻までが刊行され、全話が収録された。おそらくゴールデン・コミックスの『伊賀の影丸』が絶版になったので、こちらに移したのだろう。
ところで、横山光輝の描く主人公の顔は(とくに目が)ある時期から変わった。「の」型で黒目の多い目だったのが、70年代前半に「U」型で白目の多い目になったのだ。「週刊少年チャンピオン」に71年から73年まで連載した『バビル2世』を見れば、最初と最後で目が変わったのがわかりやすい。サンデー・コミックスのカバー絵は、過去の扉絵などを使用したものではなく、刊行時に描き下ろしたと思われるが、1~8巻までのカバー絵の影丸と、9~15巻の影丸とでは目が違う。とくに9~15巻は初期の話が収録されているので、カバー絵と本編の絵のギャップが大きい。

ごろねこの本棚【11】(6)

  • ごろねこ
  • 2020/02/22 (Sat) 22:14:57
『原作愛蔵版・伊賀の影丸(5)半蔵暗殺帳/(6)地獄谷金山』(横山光輝)
講談社・(5)2008年8月22日、(6)9月22日刊・B6判

『伊賀の影丸』は、上記以外でも今まで秋田書店から文庫版2種、厚冊B6判のコミック・セレクト版、小学館から四六判の叢書版、変わったところでは昭文社から「半蔵暗殺帳の巻」だけがB5判ハードカバー函入りで刊行されている。だが、講談社からようやく完全版ともいえるシリーズが刊行された。「原作愛蔵版」という呼称は意味がよくわからないが、「各週の『巻頭絵』を全ページ掲載」とある。「巻頭絵」とは、連載時の「扉絵」のことかと思ったが、そうではなかった。「扉絵」も(縮小したものを含めて)多く掲載しているがすべてではない。連載時の今号の末尾と次号の冒頭のコマがダブることが多く、単行本化するときにダブりのないように編集しているのだが、この本ではそれを元に戻し、ダブりもそのまま掲載している。すると、次号の冒頭にある「今までの話」という欄も甦り、文章は削除してあるがその欄に使用されたカット絵(すなわち巻頭絵)は残り、それを全ページ掲載しているということだった。
また、本文中の広告なども単行本化ではカットし編集していたが、それも元に戻し、広告部分は余白にしてある。「若葉城の巻」では影丸が邪鬼に捕らわれるシーンを、16ページも復元している。ただし描き変えた半蔵の顔は元に戻していない。
1章につき1冊というのも読みやすい。ただし「由比正雪」は634ページあるが、「土蜘蛛五人衆」は330ページしかないように差が激しい。最終巻「影丸旅日記」には、番外編の『影丸と胡蝶』『伊賀の影丸・外伝』『伊賀の影丸・百舌の藤蔵』『その後の伊賀の影丸』を収録している。

ごろねこの本棚【11】(7)

  • ごろねこ
  • 2020/02/23 (Sun) 22:07:31
『貸本版・伊賀の影丸・若葉城の秘密【限定版BOX】』(横山光輝)
小学館クリエイティブ・2010年6月30日刊・A5判ハードカバー(4巻函入り)

(1)で紹介した東邦図書出版の「横山光輝漫画全集」の3巻から6巻までを復刻したBOX版。
「週刊少年サンデー」1961年4月2日号から11月26日号に連載。これ限りの連載予定だったらしく、章名はない。単行本化されるときに「若葉城の巻」「若葉城の秘密」と章名が揺れるのはそのせいである。ちなみに「若葉城」は予告では「黒鳥城」となっていた。まだ月刊誌時代の「少年探偵」や「少年剣士」と同じく、少年が大人顔負けの活躍をする「少年忍者」ものとして描かれており、影丸は少年忍者である。ヒントになったのは山田風太郎の『甲賀忍法帖』で、特殊能力や術を使う忍者のバトルというのが、その後の少年まんがに大きな影響を与えたことは、よく知られている。ただ、『甲賀忍法帖』から忍者の特殊能力や忍者戦には多くのヒントを得ているが、話は「宇都宮の吊り天井事件」といわれる、元ネタが何かはわからない将軍暗殺事件からヒントを得ており、作者はたとえば1956年公開の中川信夫監督の『怪異宇都宮釣天井』などの映画を見て、それを知ったのかも知れない。

ごろねこの本棚【11】(8)

  • ごろねこ
  • 2020/02/24 (Mon) 22:13:43
『貸本版・伊賀の影丸2・由比正雪の巻【限定版BOX】』(横山光輝)
小学館クリエイティブ・2010年10月18日刊・A5判ハードカバー(5巻函入り)

東邦図書出版の「横山光輝漫画全集」の7巻から11巻までを復刻したBOX版。
「週刊少年サンデー」で『伊賀の影丸』(若葉城の巻)の連載が終了した後、『宇宙警備隊』が始まり、61年12月3日号から62年4月8日号まで連載された。これは元々『伊賀の影丸』を始める前に、次は科学冒険もの(とくに宇宙もの)を描くと編集部と約束させられていたらしい。だが、連載終了後も『伊賀の影丸』の人気は収まることもなく、62年7月15日号から再開された。このときも「第二部」とか「由比正雪の巻」とかいった表記はない。「少年忍者」という呼称もしなくなり「忍者」となった。謀反を起こして処刑された由比正雪は身代わりで、じつは生きていたという話は、後に歴史ものや武将ものを続々と発表する作者の力の入れ具合もわかる出来になっており、シリーズ中最も長編である。私は子供のときは「闇一族」や「七つの影法師」が好きだったのだが、20代になって読み返したとき、「由比正雪」が一番面白く読めた。

ごろねこの本棚【11】(9)

  • ごろねこ
  • 2020/02/25 (Tue) 22:09:43
『伊賀の影丸3・闇一族の巻【限定版BOX】』(横山光輝)
小学館クリエイティブ・2011年11月30日刊・A5判ハードカバー(4巻函入り)

東邦図書出版はA5判ハードカバーの「横山光輝漫画全集」として「若葉城」「由比正雪」を刊行した後、B5判のホームランブックスに変えて1964年に「闇一族」「七つの影法師」を刊行する。1963年に光文社からカッパコミックスとしてB5判の『鉄腕アトム』が刊行され、大ヒットしたが、以後この判型のコミックスが流行りとなり、それに合わせたものだろう。それをこの限定版BOXでは、前2部に揃えてA5判ハードカバーに変えて復刻している。「貸本版」という表記がなくなったのはそのせいである。ホームランブックスの「闇一族」は全5巻だったが、4巻には『未来をのぞいた男』、5巻には『13番惑星』という短編が併載されていた。この復刻ではそれらの短編をカットし、4巻5巻を1冊にまとめ、全4巻にしている。1巻減ったぶん、原本の第4巻の表紙は使われていない。
連載は63年の5月12日号から11月17日号までで、この話から「第三部・闇一族の巻」という章表記がされるようになった。じつは、私がリアルタイムで最初に読んだ『伊賀の影丸』は「闇一族」で、影丸と人影が戦う回だったのを覚えている。当時、岩風は死んでいないで、邪鬼のように再登場するのではないかと、連載終了まで期待していた。

ごろねこの本棚【11】(10)

  • ごろねこ
  • 2020/02/26 (Wed) 22:15:55
『伊賀の影丸4・七つの影法師の巻【限定版BOX】』(横山光輝)
小学館クリエイティブ・2013年4月27日刊・A5判ハードカバー(3巻函入り)

これもB5判のホームランブックスをA5判ハードカバーに変えて復刻し、BOXにしたもの。
『伊賀の影丸』を少年まんがの能力バトルの原点と見るなら、その中でもバトルのためのバトルに終始する「七つの影法師の巻」はその最たるものだろう。個人的にも、「闇一族」とのバトルが終わり、「七つの影法師」とのバトルが始まった頃の、作品の、そして読者としての高揚感は凄かったと思う。
山田風太郎の『甲賀忍法帖』をヒントにしたといっても、『伊賀の影丸』に山田作品のエログロ要素はかけらもない。「若葉城」には、特異体質の忍者なども登場したが、「由比正雪」以降は、催眠術や幻術はあるものの基本的に体術の勝負で、まるでスポーツのようなスピード感で描かれるバトルである。不死身の阿魔野邪鬼を除けば、ミュータントは登場しない。たとえば、「若葉城」の蜘蛛の糸を吐くクモ丸やカメレオンのように肌の色を変える十兵衛は、「闇一族」では縄を蜘蛛の糸のように操る左門や、敵の影の中に隠れる人影、あるいは気配を消して周囲にとけこむ霧丸になる。このバトルものの原点に、時代と共に様々な要素が付加されて、数々の名作を生み出すことになるのである。

ごろねこの本棚【11】(11)

  • ごろねこ
  • 2020/02/27 (Thu) 22:12:12
『宇宙警備隊(1)(2)』(横山光輝)
アップルBOXクリエート・(1)1990年12月25日、(2)91年2月15日刊・A5判

『伊賀の影丸』の「若葉城の巻」の終了後に連載したSFまんが。とりあえず横山光輝の顔を立てて忍者まんがを連載した後、編集部の意向通り、宇宙を舞台にしたSFまんがを始めたが、『伊賀の影丸』の再開を望む読者の声に負けて、4か月で終了した作品。私はこの作品をリアルタイムでは読んでいなく、その後単行本化もされなかったので、長いこと読むことができなかったが、アップルの「横山光輝名作集」で、初めて読んだ。宇宙警備隊のタイトル通り、宇宙ギャングと戦うのが第1部。戦闘で、けっこう警備隊のメンバーがバタバタと死んでいくのが驚き。一応、主人公は天城四郎という隊員だが、キャラが弱く、どの隊員とも区別がつかない。横山光輝の宇宙ものの傑作は、65年開始の『宇宙船レッドシャーク』まで待たなければならない。

ごろねこの本棚【11】(12)

  • ごろねこ
  • 2020/02/28 (Fri) 22:07:10
『宇宙警備隊【限定版BOX】』(横山光輝)
小学館クリエイティブ・2011年12月25日刊・A5判(3巻函入り)

1巻、2巻が本編。各巻はアップルと同じ収録だが、こちらは連載時のまま、各回扉絵から収録し、扉絵のカラーも再現されている。ただしカラー扉絵があるのは1巻収録の回(9回中5回)だけで、2巻の回は1回もカラーがない.やはり人気が出なかったのだろう。第2部「最期の日」は、何と地球最後の日を描く。これを宇宙警備隊の話にする必要があるのかと疑問に思ってしまう。もう1巻は「少年サンデー掲載短編集・影の世界」で表題作のSFなど7編を収録。7編中6編がカラー扉絵になっている。

ごろねこの本棚【11】(13)

  • ごろねこ
  • 2020/02/29 (Sat) 22:12:16
『甲賀忍法帖』(山田風太郎・原作、画・小山春夫)
アップルBOXクリエート・2016年11月25日刊・A5判

1963年に東邦図書出版社からA5判ハードカバー全3巻で刊行された作品を、1冊にして復刻したもの。原作の山田風太郎の小説は58年から59年にかけて連載され、「忍法帖シリーズ」の第1作にあたる。その小説をヒントに61年に『伊賀の影丸』「若葉城の巻」が描かれたのは上述のとおり。私は、当時(おそらく65年頃)この作品を貸本で読んだが、すでに『伊賀の影丸』を読んだ後で、影丸の亜流作品が溢れていた頃だったので、こちらのほうが影丸の基になった小説のまんが化とは気がつかなかった。小山春夫という作者はまだ知らず、第1巻の表紙絵がやや横山タッチの絵だったので、借りて読んだのだと思う。その表紙絵は小山が描いたものではなく、本文の絵は白土三平タッチであり(小山は白土の赤目プロにいた)、例えばナメクジのような忍者が登場したりとやたらグロテスクな描写が印象に残っている。小説の『甲賀忍法帖』を読んだのはだいぶ遅く、『おぼろ忍法帖』(のちに『魔界転生』と改題)『伊賀忍法帖』が映画化された81、82年頃にそれらの原作と一緒に読んだのだが、さすがにそのときには、「若葉城の巻」に出てくる忍者たちは、この作品から引用していると知ったのだった。

ごろねこの本棚【11】(14)

  • ごろねこ
  • 2020/03/01 (Sun) 22:16:04
『宇宙船レッドシャーク(上・下)』(横山光輝)
講談社・共に2005年2月10日刊・文庫判

『宇宙警備隊』は主人公のキャラが弱く、かといってチーム・プレイの面白さを描いていたわけでもなかった。その失敗を教訓にしたのか、『宇宙船レッドシャーク』は、主人公・一色健二の成長ドラマの要素も強く、SFとしても面白い。「少年ブック」1965年4月号から67年3月号まで連載したが、連載前の65年1月号には4月号から始まる宇宙大冒険まんがのタイトルを読者から募集していた。『宇宙船レッドシャーク』というタイトルが、入選したものなのかどうかは寡聞にして知らないが、募集した中にいいタイトルがなく、横山がつけたのではないかと推測する。というのは、『レッドマスク』『仮面の忍者赤影』『紅こうもり』『くれない頭巾』など、「レッド」は作者が好んで使う色だからである。アニメ化も企画されパイロット・フィルムも作られたようだが、放映されることはなかった。『コマンドJ』と同じく、この作品も長らく単行本化されなく、この文庫版が初単行本化だった。

ごろねこの本棚【11】(15)

  • ごろねこ
  • 2020/03/02 (Mon) 22:09:46
『少年ブック版・宇宙船レッドシャーク【限定BOX】』(横山光輝)
小学館クリエイティブ・2012年7月31日刊・A5判(3巻+別冊函入り)

文庫の単行本化だけではさびしいと思っていたら、出ました、お馴染みの【限定BOX】。
『宇宙船レッドシャーク』は、「疫病神ジャック」「ガニメド」「マロー星探検隊」「反乱」「宇宙からの帰還者」の5話から成る。文庫版はキリよく2話と3話収録の上下巻だったが、こちらは全3巻なので「ガニメド」と「反乱」が2巻にわたっているのが残念。ただBOX版は、全回カラー扉絵のこの作品を、毎月分扉絵から始まる連載時のスタイルで収録し、本文のカラーページもすべて復刻している。また別冊付録の表紙を収録した「別冊付録表紙絵集」も付いている。

ごろねこの本棚【11】(16)

  • ごろねこ
  • 2020/03/03 (Tue) 22:11:52
『ベリー・ファーザー(1)(2)』(さいとう・たかを)
さいとうプロ・1963年8、9月刊・A5判ハードカバー

子供の頃、私は天文少年だったので、宇宙を舞台にした映画やドラマやまんがが好きだった。だが、その頃は、宇宙が舞台でも地球が舞台でも大して変わらない作品が多かった。ようするに宇宙らしさを感じなかったのである。初めて宇宙らしさを感じたまんがが、この『ベリー・ファーザー』だった。第1巻は「放浪」。核戦争で死の星となった地球から脱出した人々は、国際連邦宇宙艇の一群で新たな地球を探したが見つからず、宇宙をさまよいながら地球が甦るのを待っていた。その中の学校にあたる小型艇が、次元調節器の異常によって遠い別宇宙へ飛ばされてしまう。食糧を求めて着陸した星で、異星人に襲われ、何とか逃げるが……。第2巻は「デッド星群」。異星人にとっての病原体を保有していたため、異星人が再び襲って来るが、人工的な星の群を見つけ、そこへ逃げ込む。だが、宇宙艇は破壊され、仲間も殺されていく。……貸本劇画であり、絵もストーリーも荒いが、それまでに読んだどの作品よりも宇宙らしさを感じて、大好きな作品となった。

ごろねこの本棚【11】(17)

  • ごろねこ
  • 2020/03/04 (Wed) 22:06:30
『ベリー・ファーザー(3)(4)』(さいとう・たかを)
さいとうプロ・1963年10、11月刊・A5判ハードカバー

2巻の最後で、クルーたちを助け、新たな宇宙艇を贈ってくれたのはデッド星群の異星人で、小型ロボットのピンキーまでガイドとしてつけてくれた。そして、第3巻「火の掟」では地球の前世紀のような恐竜たちがいる星に着陸し、第4巻「巨大なる細胞」では宇宙の塵を吸収して成長する、星のような生物バーメアに遭遇する。3巻のあとがきに、『ベリー・ファーザー』という作品について「生まれたての坊やですのでなかなか思うように動いてくれません。しかし、それだけに成長を楽しんでいるんです」と書いてある。まだまだ続いていくのだろうなあと期待していたら、4巻で終わってしまった。急転直下の完結は物足りない思いを残したが、貸本の場合、未完だったりウヤムヤに終わったりすることが多かったので、完結したのはよかったのかも知れない。この作品は、『宇宙家族ロビンソン』をヒントに、家族を学校に変えて描いたものと思ったが、『宇宙家族ロビンソン』は65年からの(日本では66年からの)放送だった。ただ、元々がアメコミを原案にしたドラマなので、何かでその情報を得たのかも知れないし、そうでなくても、『ベリー・ファーザー』には当時の(公開、未公開を問わず)映画のスチールなどの資料を参考にしたと思われる節がある。そうした熱意が、この作品に魅力を与えているのだろう。

ごろねこの本棚【11】(18)

  • ごろねこ
  • 2020/03/05 (Thu) 22:10:01
『サイレントワールド(1)(2)』(さいとう・たかを)
秋田書店・(1)1968年6月20日、(2)8月31日刊・新書判

『ベリー・ファーザー』のリメイク。「少年マガジン」の1966年50号から67年32号まで連載された。絵もストーリーも遥かに巧くなっているが、今思うと、たった3年しか経っていないことに驚く。死の星となった地球から脱出した人々の話ではなく、学校規模の宇宙艇の話でもない。宇宙開発のために月基地で訓練を受けている少年少女7人が主人公で、テスト飛行の小型偵察機に忍び込んだものの事故に遭って、宇宙の彼方へ飛ばされるという設定に変わっている。物語としては『サイレントワールド』のほうが面白いし絵も緻密なので、どちらかを読むならこちらを薦めるが、個人的には最初に読んだ印象が強く、『ベリー・ファーザー』のほうが好きである。

ごろねこの本棚【11】(19)

  • ごろねこ
  • 2020/03/06 (Fri) 22:07:40
『漂流(1)(3)』(さいとう・たかを)
リイド社・(1)1993年3月19日、(3)11月8日刊・B6判

1992年に「リイド・コミック」に連載した、さいとう・たかをのもう一つの宇宙漂流もの。全4巻。宇宙のひずみに落ち込んで漂流することになるのは、前2作とほぼ同じだが、元々宇宙貨物船だったものが、150年漂流するうちに形態を変化させ3万人が居住するスペースコロニーになっているように、3作品では最も大規模な漂流となっている。また前2作は少年向けだったが、これは青年向けの作品なので、エログロ(というほどではないが)の表現も多い。主人公はゴローという男。さいとう作品では「捜し屋はげ鷹」や「シュガー」のようにコミカルな面を持つ男だが、様々な冒険の果てにコロニーを救う存在になっていく。さいとう作品の宇宙SFとしては集大成として描いたと思われるが、現代劇や時代劇と比べると、やはり異色作に見えてしまうのは仕方がないだろう。

ごろねこの本棚【11】(20)

  • ごろねこ
  • 2020/03/07 (Sat) 22:14:18
『MIDWAY宇宙編 星野之宣自選短編集』(星野之宣)
集英社・2001年3月24日刊・B5判

宇宙が舞台の作品を描いた作家は多いが、私が最もリアルに感じるのは星野之宣である。個別の単行本はまたいずれ紹介するとして、ここでは自選短編集『MIDWAY宇宙編』を挙げておこう。デビュー25周年記念に出版された自選集の1冊。01年は26年目になってしまっているが、先に出た「歴史編」は00年に刊行されている。「宇宙編」の収録作品は8編。『残像』は表題作となった単行本もあり、この中では一番古い(1980年)作品。初期の星野作品はSFまんがのお手本のようで面白かった。次第にお手本の領域を超えて感心するしかない作品になっていったが、さらに面白くなっていった。とくに私の好きな作品に「2001夜物語」があるが、その中から3編『豊穣の海』『悪魔の星』『鳥の歌いまは絶え』が選ばれている。「スターダストメモリーズ」からは『射手座のケンタウロス』『セス・アイボリーの21日』の2編。他に「ベムハンター・ソード」から『惑星ファイオリ』と、シリーズものではない『星の町(ズヴェズドヌイ・コロドク)』が収録されている。どの作品も深遠な宇宙を背景に、切なくなる人間の存在が描かれている。

ごろねこの本棚【10】(1)

  • ごろねこ
  • 2020/01/28 (Tue) 22:06:41
『黄金バット/なぞの巻・地底の国』(永松健夫)
桃源社・1975年5月10日刊・B6判
『黄金バット/天空の魔城・彗星ロケット』(永松健夫)
桃源社・1975年5月20日刊・B6判

加太こうじの解説によると、1930(昭和5)年に紙芝居の画家にアルバイト学生として採用された永松健夫(当時は本名の永松武雄)は田中二郎台本の『黒バット』などを描いていた。悪人が主役の『黒バット』を終わらせるために、正義の味方の黄金バットを生み出し、黒バットを倒したが、その黄金バットが人気になり、鈴木一郎台本で『黄金バット』という紙芝居を描き、一世を風靡することになる。永松が学校を卒業して就職し紙芝居を描かなくなると、加太こうじと菊池広雲が鈴木台本の『黄金バット』を受け継いで描いたという。都筑道夫の解説によると、『黄金バット』には贋作がたくさんあり、当時都筑が見た作品は永松版や加太版ではなかったかも知れないと述べている。もっとも同じ作品でも、紙芝居屋の語りによって説明やキャラクターの名称は異なることもある。戦後になって紙芝居が復活すると、永松も加太も『黄金バット』を描き出すが、両者はスタイルや設定に違いがあったという。戦時中、小学館で永松の同僚だった平木忠夫が明々社という出版社を起こし、永松の『黄金バット』を単行本として刊行したいと願い、初めてまんが(まんがと絵物語の中間のようなジャンル)として描かれ、大ヒットとなった。これはその復刻版である。

ごろねこの本棚【10】(2)

  • ごろねこ
  • 2020/01/29 (Wed) 22:12:17
『黄金バット(上・下)』(永松健夫)
少年画報社・1978年1月1日刊・四六判

明々社は永松の『黄金バット』を、第1巻「なぞの巻」(1947年11月)、第2巻「地底の国」(48年1月)、第3巻「天空の魔城」(48年4月)、第4巻「彗星ロケット」(49年3月)と刊行した。また、48年8月に創刊した「冒険活劇文庫」では、49年12月号まで13回にわたって、黄金バット誕生編ともいうべき「アラブの宝冠」が連載され、50年1月号から5月号まで「科学魔篇」が連載されたが未完で終わった。ちなみに「冒険活劇文庫」は50年4月号から「少年画報」と改題され、明々社も少年画報社と改名した。また、後に52年8月号から53年8月号まで『新黄金バット』が連載された。
桃源社版は、単行本の全4巻と「科学魔篇」を復刻している。単行本の話は色インク1色の復刻なので読みにくく、「科学魔篇」は絵物語形式でB5判に連載されたものをそのままB6判に縮小しているので、これまた極めて読みにくい。
この少年画報社の復刻本は2色ページも多く読みやすいが、上下巻で単行本の3巻までしか復刻していないのが残念である。

ごろねこの本棚【10】(3)

  • ごろねこ
  • 2020/01/30 (Thu) 22:07:03
『小説 黄金バット』(加太こうじ)
筑摩書房・1990年8月30日刊・四六判

本来、『黄金バット』の紙芝居台本は鈴木一郎(本名・鈴木平太朗)という人物が書いていたが、戦後は永松健夫も加太こうじも独自の設定で描いており、この二人が『黄金バット』の作者として名が残っている。永松版は上記のように復刻版が出た。加太こうじ作・絵の『黄金バット』の絵物語の単行本もあるらしいが、復刻版は出ていない。永松版とは違うヴィジュアルなので紹介したいが、絵物語の詳細は不明である。「アサヒグラフ別冊/紙芝居集成」(1995年)に加太の紙芝居版『黄金バット』の一部が載っている。それによると、「ナゾ-編」「怪タンク出現」「怪獣編」がある。その書影では黄金バットの絵が小さいので、ここでは「ナゾ-編」の一葉を表紙にした『小説 黄金バット』を挙げておく。といっても、この本は黄金バットを主役にしたヒーロー小説ではなく、「黄金バット」を生み出した紙芝居屋の周辺を描いた群像ドラマであり、しかも実録ではなく、加太の創作である。それにしてもこの黄金バットは、眼といい歯といい、最強のスーパーヒーローに見えないのだが……。

ごろねこの本棚【10】(4)

  • ごろねこ
  • 2020/01/31 (Fri) 22:05:45
『少年コミックス/黄金バット特集号』(一峰大二)
少年画報社・1967年7月15日刊・B5判

さて、紙芝居も絵物語も過去のものになり、そのヒーローも忘れさられようとしていた頃、『黄金バット』は復活した。1966年12月に実写映画が公開され、67年4月からはTVアニメが放送されたのである。それに合わせて、まんが版『黄金バット』も描かれる。まず映画公開に合わせて「週刊少年キング」に66年12月から1年間、次にTVアニメ放送に合わせて「少年画報」に67年4月から1年間、それぞれ連載された。共に「永松健夫・原作、加太こうじ・監修」となっているのは、永松はすでに1961(昭和36)年に死去していたからだろうか。キャラもストーリーも加太版をベースにしているようだ。
「週刊少年キング」の連載は一峰大二が作画を担当している。「少年コミックス」は「少年キング」「少年画報」に掲載のまんがの総集編を載せる雑誌で、年四回の刊行だが、あまり続かなかったように思う。他に「マグマ大使特集号」などがあった。

ごろねこの本棚【10】(5)

  • ごろねこ
  • 2020/02/01 (Sat) 22:09:38
『黄金バット(1)(2)』(作・加太こうじ、画・一峰大二)
大都社・共に1990年9月20日刊・B6判

「少年コミックス」版では、次のように章が立てられている。
①黄金バット誕生(29頁)、②四つ目の怪球(25頁)、③バキュアム(67頁)、④怪獣アドド(86頁)
大都社版の第1巻は、次の通り。
①黄金バット復活の巻(54頁)、②バキュアムの巻(67頁)、③ビッグ・アイの巻(94頁)、④物体X・アドドの巻(85頁)、⑤青い炎の国の巻(前編)(72頁)
大都社版が雑誌連載順かどうかは不明だが、もしそうであるなら、「少年コミックス」版の①と②を1章「黄金バット復活の巻」とし、3章「ビッグ・アイの巻」を復活させ、4章「物体X・アドドの巻」は1頁カットしていることがわかる。
一峰といえば、古くは『ナショナルキッド』『七色仮面』から『ウルトラマン』シリーズや『電人ザボーガー』『スペクトルマン』など、映像ヒーローものをまんが化する第一人者といえる。永松版をリアルタイムで読んでいない私には、永松版の黄金バットのスタイルやストーリーの異世界感よりは一峰版のほうがしっくりくる。

ごろねこの本棚【10】(6)

  • ごろねこ
  • 2020/02/02 (Sun) 22:07:07
『黄金バット(上・下)』(智プロ・井上智)
アップルBOXクリエート・2006年12月15日刊・A5判(函入り)

アニメ版の『黄金バット』は見ていなかったが、資料から見る限り井上版のほうがアニメ版に近い。井上智は、1958年から59年にかけて中村書店の「ナカムラマンガシリーズ」から『黄金バット』を3冊刊行したこともあった。一峰大二と同じく映像ヒーローもののまんが化作品も多く、『魔神バンダー』『ウルトラマン』『マグマ大使』などを手がけていた。『マグマ大使』にいたっては、手塚に頼まれて「サイクロップスの巻」を代筆したほどである。また、アップルBOXクリエートで(同人誌的に)復刻されるまで単行本化されなかった理由は不明だが、当時、「少年画報」の別冊付録まんがは「少画コミックス」という1冊の別冊にまとめられており、4段が基本になるB5判本誌より、1段少ない3段分のほぼ正方形の判型だった。単行本にするときは、そこを編集しなければならないことが障害になっていたのかも知れない。アップル本では、何の編集もなく、本誌の4段と別冊付録の3段を混在したまま収録している。なお、上巻には短編『土俵の友情』『エレベーターの怪事件』、下巻には『魔神ゴルゴン』を併録。

ごろねこの本棚【10】(7)

  • ごろねこ
  • 2020/02/03 (Mon) 22:08:13
『怪盗黄金バット』(手塚治虫)
東光堂・1947年12月20日刊・B6判(函入り)

画像は、名著刊行会で復刻した「手塚治虫初期名作漫画館」(1980年刊)のもの。
これは永松・加太の『黄金バット』とは何の関係もない。著作権に無頓着だった時代、ヒット作の贋作・模倣作は当たり前だった。1946年に『マアチャンの日記帳』でデビューした手塚治虫は翌47年『新宝島』というヒット作を出すが、同じ年に『キングコング』やこの作品も出していた。タイトルといい髑髏の顔といい明らかに『黄金バット』をパクっているが、超人ではなく、人間がマスクをつけて扮装している怪盗である。しかもストーリー上、この怪盗が黄金バットである必要はまったくない。出版社か手塚自身の意向かわからないが、47年11月に刊行して大ヒットとなった永松版『黄金バット(なぞの巻)』の人気に便乗しようとしたのかも知れない。予め出来ていた作品に、急遽黄金バットのキャラを組み込んだか、作品自体を急遽描いたものなのかもわからないが、本家の大ヒットを確認した上で翌月に刊行できたとしたら、それはやはり手塚の才能なくしては考えられないだろう。

ごろねこの本棚【10】(8)

  • ごろねこ
  • 2020/02/04 (Tue) 22:21:06
『黄金魔人』(永松健夫)
我刊我書房・2017年1月11日刊・A5判

永松健夫は何といってもSFの『黄金バット』で、他は「冒険王」に連載した柔道絵物語『花も嵐も』が代表作だと思うが、その他の作品はあまり知られていない。3年前に初復刻された『黄金魔人』も私はまったく知らなかった。この本にはスーパーヒーローもの3編が収録されている。『黄金魔人』は「譚海」1952年9月から53年10月号まで連載。黄金魔人の正体は誰か、という懸賞があったらしい。『超人・黄金ナイト』は「おもしろブック」54年9月号掲載の読み切り作。敵の大だこ型ロケットが斬新だ。両者とも「黄金」と付くのは、やはり『黄金バット』の影響で編集部から要求されるのだろうか。『爆弾Z』は「譚海」52年5月号から8月号まで連載。主人公の爆弾Zという少年ヒーローは原子調節器を使って体を自由に大きくしたり小さくしたりできる。70年近く前に、すでにアントマンと同じ能力のヒーローがいたわけである。

ごろねこの本棚【10】(9)

  • ごろねこ
  • 2020/02/05 (Wed) 22:12:18
『デン助(5)』(白吉辰三)
トモブック社・1958年10月25日刊・B6判
『デン助(7)』(鈴木忠三)
トモブック社・1959年1月15日刊・B6判

デン助は、大宮敏充(旧・敏光)の役名。戦前から劇団を旗揚げして公演していたが、戦後の46年に「デン助劇団」を結成し、浅草松竹演芸場を拠点に公演し、人気を博す。58年から59年にかけてはデン助を主役とした映画が何本もつくられ、「別冊付録・メディアミックス編」で紹介した『デン助の陽気な靴みがき』(とりうみやすと)、『デン助の拳闘王』(平川やすし)など、多くまんが化されている。また59年4月からは『デン助のお巡りさん』がTVで始まり、9月からは『デン助劇場』となって72年まで続いた。トモブック版『デン助』はTV番組が放送する前から刊行されており、その人気のほどがわかるだろう。『デン助劇場』は放送枠の異動は多少あったが、土曜日の午後1時頃から40分枠で、演芸というより下町人情喜劇の舞台を公開収録している番組だったと思う。当時(とくに60年代中頃)、私は学校から帰宅して昼食を食べながら(土曜日は学校の授業が半ドン〔=午前だけ〕だった)この番組を見ていた。

ごろねこの本棚【10】(10)

  • ごろねこ
  • 2020/02/06 (Thu) 22:24:24
『ガラス玉』(岡田史子)
朝日ソノラマ・1976年2月29日刊・新書判

岡田史子の最初に世に知られた作品は、「COM」1967年2月号の投稿欄に縮小掲載された『太陽と骸骨のような少年』である。64年に白土三平の『カムイ伝』を発表する場として長井勝一が創刊した「ガロ」に対抗して、手塚治虫が「鉄腕アトムクラブ」を発展的解消させて作った雑誌が「COM」である。「ガロ」においては新人発掘は窮余の策だったが、「COM」ではそれも目的化していた。一番は『カムイ伝』に対抗する『火の鳥』の発表にあったのだろうが、創刊2号目に岡田史子が登場したことで、「COM」の新人登竜門としての性格は早くも決定づけられたといえるだろう。当時、60年代半ばには、「ガロ」はもちろん、終焉に向かう貸本誌や成長していく青年誌にまんがの新たな兆しが様々に芽吹いていた。それらは60年代後半から70年代にかけて、色とりどりに花を咲かせていくことになる。その中に、西洋文学の詩情と哲学の匂いを含んだ岡田作品もあった。それは多くの亜流を生みそうな浅学で軽薄な作品のようにも見えたが、亜流が生まれることはなく、唯一無二の岡田の才能だった。『太陽と骸骨のような少年』は「ガロ」からは突き返されたそうなので、「COM」との相性もよかったのだろう。なお、『ガラス玉』は月例の入選作として68年1月号に掲載され、同時に「COM」新人賞も獲得した作品である。

ごろねこの本棚【10】(11)

  • ごろねこ
  • 2020/02/07 (Fri) 22:24:25
『ほんのすこしの水』(岡田史子)
朝日ソノラマ・1978年5つき25日刊・新書判
『ダンス・パーティー』(岡田史子)
朝日ソノラマ・1979年4月25日刊・新書判

『ガラス玉』は次の10編が収録されている。1967年『太陽と骸骨のような少年』『ポーヴレト』『夏』/68年『ガラス玉』『サンルームのひるさがり』『ホリディ』『赤い蔓草Part1・Part2』/69年『ピグマリオン』『私の絵本』/70年『墓地へゆく道』
『ほんのすこしの水』は次の10編が収録されている。67年『天国の花』/68年『春のふしぎ』『いずみよいずみ』『胸をだき首をかしげるヘルマプロディトス』/69年『ほんのすこしの水PartⅠ気のどくな乞食・PartⅡ月の女』『イマジネイション』『夢の中の宮殿』『死んでしまった手首-阿修羅王-前編・後篇』/70年『トッコ・さみしい心』『いとしのアンジェリカ』
『ホリディ』は岡田が所属していた同人誌「アイ」、『イマジネイション』は「COM」の姉妹誌「ファニー」に掲載されたが、他の作品はすべて「COM」に発表された作品である。これですべてではないが、「COM」へは67年から70年までの4年間に25編発表しており、これは岡田全作品のうち半分以上となる。このとき岡田は17歳から21歳であり、決して侮るわけではないが、これらの文学的達成は奇跡としかいいようがない。おそらくは読書などの着眼も吸収も効率的に行うことができ、自分なりに理解できる勘の良さでまんがという形式に再生できる能力に長けていたのだろう。
『ダンス・パーティー』は次の5編の収録である。
70年『無題』/78年『ダンス・パーティー』『柳の木の下で』『アンニ-おばさんの砂金ちゃん』/79年『家出前夜』
『無題』は「COM」に最後に掲載された作品。『ダンス・パーティー』『アンニーおばさん…』は「少女コミック増刊」、他の2編は「マンガ少年」に載ったものである。

ごろねこの本棚【10】(12)

  • ごろねこ
  • 2020/02/08 (Sat) 22:15:11
『岡田史子作品集 1・赤い蔓草/2・ほんのすこしの水』(岡田史子)
NTT出版・1992年11月30日刊・B6判

この作品集は、1巻は67年『太陽と骸骨のような少年』から69年『夢の中の宮殿』までの16編、2巻は69年『ピグマリオン』から70年の『無題』までの13編を、それぞれ発表順に収録している。ただ『愛の神話』という「ファニー」に10回にわたって連載された見開き2ページのギリシャ神話の文とイラストで構成された作品は2巻の末尾に収録されている。これらが、この4年間に発表されたすべての作品である。朝日ソノラマの3冊に収録されていない作品は、1巻は67年『フライハイトと白い骨』/68年『赤と青』/69年『ワーレンカ』、2巻は69年『邪悪のジャック』『死んでしまったルシィ』『愛の神話』/70年『黒猫』である。
この4年間の岡田作品からは眩しいほどの才能を感じる。私は物語性のある『赤い蔓草』も、絵に特化した『サンルームのひるさがり』も、哲学的な『夢の中の宮殿』も、詩的な『墓地へゆく道』も、すべてが好きだった。71年には心中事件を起こして作品は途切れてしまうが、その後、朝日ソノラマの『ダンス・パーティー』に収録されたようなドラマを語る作品は何か違うような気がし、わけのわからない作品は本当にわけがわからなくなっていた。逆に、71年以降の作品を収録した唯一の単行本『ダンス・パーティー』は貴重だが、私としては岡田作品を読むならこのNTT出版の作品集を薦めたい。

ごろねこの本棚【10】(13)

  • ごろねこ
  • 2020/02/09 (Sun) 22:22:41
『ODESSEY1966~2003岡田史子作品集episode1ガラス玉』(岡田史子)
飛鳥新社・2003年6月30日刊・A5判
『ODESSEY1966~2003岡田史子作品集episode2ピグマリオン』(岡田史子)
飛鳥新社・2004年3月30日刊・A5判

じつはNTT出版版とこの作品集の間(1999年)にまんだらけ出版から『限定版・岡田史子未発表作品集1966~1988』という本が刊行されている。限定200部で、署名や肉筆イラストを使った豪華本だったが、私は諸事情で(笑)購入しなかった。同人誌時代に描いた作品や「COM」に載せる予定の作品、未完成の作品などが収録されているらしい。
その中の何作かは、この飛鳥新社版に収録されている。「ガラス玉」には既出12編に、66年『黄色のジャン・川辺のポエム』/70年『オルペとユリデ』の2編、「ピグマリオン」には既出8編に、66年『耳なしホッホ』『火陥ーひがもえる』『火焔』『kaen』/70年『海の底の日よう日』(イラスト)の5編である。さらに、この本の監修者・青島広志は岡田と交友があり、そのスケッチブックに残したイラスト(落書き)も何点か収められている。また、岡田自身が語る「自分史」もファンなら必読。

ごろねこの本棚【10】(14)

  • ごろねこ
  • 2020/02/10 (Mon) 22:10:26
『ODESSEY1966~2003岡田史子作品集episode1ガラス玉 増補新装版』(岡田史子)
復刊ドットコム・2017年12月15日刊・A5判
『ODESSEY1966~2003岡田史子作品集episode2ピグマリオン 増補新装版』(岡田史子)
復刊ドットコム・2018年1月19日刊・A5判

飛鳥新社版の復刻だが、増補新装版になっている。
1巻に追加されたのは『みず色の人形』『愛しすぎた男』の2編。2巻は『ブランコ』『岡田史子の匣』の2編。これらも『未発表作品集』に入っていた作品のようだ。他に、青島広志所蔵のカラーイラストが各巻2枚ずつ追加されている。それにしても、71年以降の作品は『ダンス・パーティー』以外、まったく単行本化されていないのはもったいない。単行本未収録の作品が載っている「SFマンが競作大全集」や「夢の博物誌」など購入したものもあるが、全部読んだわけではない。単行本未収録作品をすべて集めても、おそらく1冊にまとまるだろうから、どこかで刊行してくれないものだろうか。

ごろねこの本棚【10】(15)

  • ごろねこ
  • 2020/02/11 (Tue) 22:28:11
『のろいの館』(楳図かずお)
秋田書店・1969年9月5日刊・新書判
『赤んぼ少女』(楳図かずお)
小学館・2008年8月4日刊・四六判

楳図かずおの少女ホラーで私が一番印象に残ったと思うのは『赤んぼ少女』である。楳図作品では蛇を代表として蜘蛛や化け猫やミイラなどが恐怖の対象になっていたが、それは理解できる。だが、「赤んぼ少女」は「赤んぼ」であり「少女」である。普通は恐怖の対象ではない。これは、赤ん坊のまま成長が止まったタマミという少女のことで、タマミに襲われる美少女の葉子の恐怖が描かれる。だが、一方でタマミの哀れな身の上も気にかかる。鏡に映る我が身や、男友達と語らう葉子を見て涙するタマミは、単なる化け物ではない。タマミが葉子に「ほんとうはおまえがわたしをいじめていたのよ」と言う言葉は、誰でも陰を持つ人なら共感できるのではないかと思う。「少女フレンド」に1967年に連載された『赤んぼ少女』は、最初に佐藤プロから貸本シリーズで単行本化された。そのときに、タマミが死に際に母親に告げる「タマミは悪い子でした。この家の子でもないのにひどいことばかりして……でも、でもあなたはタマミのただひとりのおかあさん……」という言葉が、「タマミは悪い子でした。心で思っていてもいつのまにか悪いことばかりするのです。葉子さんにひどいことばかりしたけど、ばちがあたったのです」と改変され、タマミの屈折した心情がよくわかるようになっている。
なお、秋田書店版では『のろいの館』とタイトルも改められているが、「赤んぼ少女」ではやはりホラー味が薄いからだろうか。併録は『怪談』。小学館は「UMEZU PERFECTION!」というシリーズの1冊で、扉絵の構成やネーム(セリフ)などを連載時の形に戻し、カラーページを新たに加えている。

ごろねこの本棚【10】(16)

  • ごろねこ
  • 2020/02/12 (Wed) 22:10:02
『赤んぼ少女』(楳図かずお)
講談社・2011年3月11日刊・文庫判
『半魚人』(楳図かずお)
講談社・2010年10月8日刊・文庫判

この文庫本のシリーズは「楳図かずお画業55th記念」の「少女フレンド・少年マガジン・オリジナル作品集」で全8巻。「なかよし」の作品も含んでいるが、毎週の扉絵、広告、予告、コピーなど、初出通りに復刻している。「UMEZU PERFECTION!」の『赤んぼ少女』も扉絵などは復刻しているが、こちらはタイトル・ロゴや煽りのコピーまで復刻している。
じつは、秋田書店版の『のろいの館』で「〔赤んぼう少女〕より」と注記してあり、カバー見返しの作者の言葉でも『赤んぼう少女』と書いてあった。さらに角川ホラー文庫版のタイトルも『赤んぼう少女』である。連載時は『赤んぼ少女』でなく『赤んぼう少女』だったのかと疑っていたが、扉絵のロゴまで復刻した本書によって、最初から『赤んぼ少女』が正しいことが証明された。作品集7『赤んぼ少女』は、他に『死者の行進』『まぼろしの蝶』『ねむり少女』が収録されている。
さて、少年ホラーでは、楳図かずおが「週刊少年マガジン」に初登場した『半魚人』が印象深い。作品集2『半魚人』は、他に『紅グモ』が収録されている。

ごろねこの本棚【10】(17)

  • ごろねこ
  • 2020/02/13 (Thu) 22:14:44
『半魚人』(楳図かずお)
朝日ソノラマ(サン・コミックス)・1971年2月5日刊・新書判
『半魚人』(楳図かずお)
朝日ソノラマ(ハロウィン少女コミック館)・1991年7月20日刊・新書判
 
サンコミ版は「楳図かずお秀作選」(全3巻)の第3巻。単行本としては、これが初。ハロウィン版は「シリーズこわい本」(全15巻+1巻)の第15巻。併録はどちらも『ひびわれ人間』『恐怖の首なし人間』。表紙の半魚人の顔は、明らかにサン・コミのほうがいい。
『半魚人』は1965年の「週刊少年マガジン」に6回にわたって連載されたが、翌年の夏に「別冊少年マガジン」に前後編にまとめられ、再録された。そのときに6ページが増補改訂され、以後、その改訂版が定本になり、前回のオリジナル版作品集以外は、すべてその改訂版になっている。『半魚人』の怖さは、一つには理由もわからず自分が(もしくは身近な者が)モンスターになっていくという怖さだが、それよりも人体改造ホラーを前面に出した点にあると思う。美少年が、口を裂かれ目を抉られ、次第に半魚人に改造されていくという怖さである。少年まんがでは、このジャンルのホラー作品は初めてなのではないかと思う。

ごろねこの本棚【10】(18)

  • ごろねこ
  • 2020/02/14 (Fri) 22:15:00
『半魚人』(楳図かずお)
講談社(PK-C)・1997年11月21日刊・新書判
『うろこの顔』(楳図かずお)
朝日ソノラマ(サン・ワイド・コミックス)・1986年6月20日刊・B6判

『うろこの顔』には、『半魚人』『恐怖の首なし人間』を収録。
初の単行本であるサンコミを見たときから、気になっていたことがあった。それは扉や目次などの「半魚人」というタイトルに「はんぎょにん」とルビがふってあったことだ。サンワイドもハロウィンも、朝日ソノラマの本はみなそうなっていたので、アメリカ映画『大アマゾンの半魚人』のときから「半魚人」は「はんぎょじん」の読みなのに、あえて「はんぎょにん」と読ませるのだろうかと疑問に思っていたのだ。だが、初出誌の出版元である講談社のPK-Cでは「はんぎょじん」とルビがふってあり、オリジナル版作品集でもすべての回の扉絵が「はんぎょじん」となっていることが確認できた。誰だ! 「はんぎょにん」などとバカなルビをふった編集者は。

ごろねこの本棚【10】(19)

  • ごろねこ
  • 2020/02/15 (Sat) 22:05:52
『轟先生(第5集)』(秋好馨)
若木書房・1967年5月15日刊・B6判
『轟先生(第1集)』(秋好馨)
文陽社・1976年1月10日刊・B6判

前に『サザエさん』を紹介したが、じつは私は「朝日新聞」を購読したことがないので、実際に新聞に掲載された『サザエさん』を読んだことはなかった。では、何を読んでいたかというと、『轟先生』である。『轟先生』は1949年から読売新聞の夕刊に掲載され、51年からは朝刊に移動し、以後、中断をはさんで73年まで続いたそうである。「先生」というのは、学校(実力学園)の教諭なのだが、あまり教壇に立っているエピソードはない。科目も何の先生だかよくわからない。それどころか、登場人物が多くて、轟先生の出ないエピソードも多い。
単行本は、1950年に文陽社から第1巻が刊行され、1巻から14巻まではB横判、15巻以降はA5判のハードカバーで28巻ぐらいまで刊行された。まだ連載中に文陽社の刊行は中断していたが、67年に若木書房から新たに第1集から刊行が始まった。ただし「あまり古いものは絵に不満があるので七、八年前の中からおもしろいものを選びました」とのこと。姉妹社の『サザエさん』と同じB6判で何集まで刊行されたかは不明だが、少なくとも67年中に第10集までは出ている。その後、「読売新聞」の連載も終了した76年に、文陽社からやはりB6判で第1集から復刊された。『轟先生』は「読売新聞」以前に、近藤日出造主宰の「漫画」や「家の光」にページまんがとして連載していたので、この復刊第1集の半分ぐらいは4コマまんがではなく、ページまんがの『轟先生』である。復刊版はオリジナル版とは構成が違うが第6集まで刊行されたようだ。

ごろねこの本棚【10】(20)

  • ごろねこ
  • 2020/02/16 (Sun) 22:11:47
『アワモリ君(2)』(秋好馨)
文陽社・刊行年月日不明・B判横変形

アワモリ君は轟先生の教え子で、実力学園の高校生。『轟先生』でも出番が多いが、「週刊読売」でスピンオフ作品として連載した。4コマまんがではなく基本9コマのページまんがである。『アワモリ君』のほうに轟先生もよく登場する。「アワモリ」というのは名のようだが、家が「アワモリ洋品店」なので姓だと思われる。名は不明だが、1961年に『アワモリ君売出す』『アワモリ君乾杯!』『アワモリ君西へ行く』と3本映画化され、映画では「アワモリ九(きゅう)」という名になっている。これはアワモリ君を演じたのが坂本九だったからだろう。ちなみに『轟先生』も47年に映画化されたり、55年から5年間TVドラマとして放送されたが、轟先生を演じたのは古川ロッパ(TVは途中で役者交代したらしい)であった。

ごろねこの本棚【9】(1)

  • ごろねこ
  • 2020/01/08 (Wed) 22:10:16
『ショート・ピース』(大友克洋)
奇想天外社・1979年3月10日刊・B6判
『ショート・ピース』(大友克洋)
双葉社・1984年11月24日刊・A5判

1970年代の末頃、大友克洋が凄いとまんがファン界隈で話題になっていた。当時、私はまんが雑誌はほとんど読まず、単行本主義になっていたので、その名はまったく知らなかった。実際には大友克洋のデビューは73年だが、その名が一般人の私に伝わるまで5年以上かかったことになる。何が凄いのかとまんがの事情通に訊くと、とにかく絵が凄いが、話も斬新で、今までのまんがとは根本的に違うのだという。ホントかな~と半信半疑ながら、ちょうど初の単行本『ショート・ピース』が刊行されたときだったので、さっそく購入してみた。確かに絵が凄く、話は斬新だった。これには多くのまんがファンがはまってしまうだろうと思われた。だが、それは宮谷一彦や真崎・守などのときのように時代の気分との一致なのではないかとも思えた。そうではなく、今までのまんがと根本的に違うと私が認識したのは、未完の『Fire-ball』と『童夢』というSF作品を読んだときだった。
奇想天外社の版は、「大友克洋自選作品集・1」となっているが、「2」が出る前に奇想天外社が倒産してしまった。収録作品は、『宇宙パトロール・シゲマ』『’ROUND ABOUT MIDNIGHT』『School-boy on good time』『任侠シネマクラブ』『大麻境』『WHISKY-GO-GO』『NOTHING WILL BE AS IT WAS』『犯す』の8編。それを再刊した双葉社の版は、「大友克洋傑作集3」となっている。それまでに傑作集1『ハイウェイスター』と2『さよならにっぽん』が刊行されていたので、3になったのだ。奇想天外社版の8編に『夢の蒼穹』を加えた9編の収録である。

ごろねこの本棚【9】(2)

  • ごろねこ
  • 2020/01/09 (Thu) 22:10:05
『童夢』(大友克洋)
双葉社・1983年8月18日刊・A5判

大友克洋の描く人物は新しかった。いや、絵として新しくはないのかも知れないが、まんがでは新しかった。『ショート・ピース』の青春ものなど、リアリティを重視する話では気にならなかったが、『童夢』や『AKIRA』などのヒーロー、ヒロインらしき人物が登場する話では、その新しさは際立つ。専門的なことはわからないが、まんがのデフォルメではなく、絵画のデフォルメをまんがに持ち込んでいるのだ。つまり、まんが的なカッコよさや可愛さ、美しさとは無縁なヒーロー、ヒロインが活躍するのである。大友以降、この人物のデフォルメを取り入れた作家の何と多いことか。そして、その物語の語り方には映画的手法が用いられている。映画的手法などはとっくの昔に手塚治虫が取り入れているではないかと思われるかも知れないが、それは映画のテクニックを真似して紙の上で置き換えていただけである。もちろん数十年の間に多くの作家が多くの描き方を工夫して創り出し、映画的な手法もそうでない手法も熟成されて、必ずしも映画的手法が優れているというわけではない。だが、大友ほど映画を描いている作家は今までいなかったと思う。『童夢』を絵コンテにして、そのまま映画を作ったとしても、そのカット割りといいアングルといい、かなり秀逸な映画になるだろう。もしまんがに変革をもたらした作家を選ぶなら、少なくとも手塚治虫と大友克洋を選ばないわけにはいかない。ただ惜しむらくは、大友は作品数が少なすぎる。

ごろねこの本棚【9】(3)

  • ごろねこ
  • 2020/01/10 (Fri) 22:08:59
『GOOD WEATHER』(大友克洋)
綺譚社・1981年3月5日刊・A5判
『BOOGIE WOOGIE WALTZ』
綺譚社・1982年5月5日刊・A5判

大友克洋の『童夢』以前の初期作品は「大友克洋傑作集」の3冊に入っているが、この2冊も見逃せない。『GOOD WEATHER』は主に76年から78年に発表された13編を収録。様々なジャンルに挑戦しているような、実験しているような作品群で、時代劇からヤクザもの、青春もの、人情もの、そしてショート・ショートまで、傑作集から漏れた拾遺とはいえ、読み応えがある。『BOOGIE WOOGIE WALTZ』は最初期の74年、75年に発表された11編を収録している。「傷だらけの天使」という7編の連作があるが、2の「スカッとスッキリ」だけが『ハイウェイスター』に収録されたため、残りの6編はこちらに収録された。すでに絵もコマ割りも完成しているが、後の映画的とは違ってイラスト的なので模索中といった感じがしてしまう。内容的にも『GOOD WEATHER』に見られるユーモアはまだ感じられず、暗さと真面目さが際立っている。

ごろねこの本棚【9】(4)

  • ごろねこ
  • 2020/01/11 (Sat) 22:12:47
『透明通信』(鈴木翁二)
青林堂・1985年4月10日刊・A5判

鈴木翁二は「ガロ」の1969年11月号に掲載の『庄助あたりで』でデビューした。私は「COM」は毎号欠かさず買っていたが、「ガロ」はたまに買う程度だった。が、なぜかこの号は買っていて、鈴木翁二のデビューを知った。そのときは、つげ義春の亜流のように見え、作品を追いかけようとは思わなかった。だが、つげ作品を追いかけていた私は、「夜行」が創刊されたとき、つげの『夢の散歩』が載っているので買ったのだが、そこに鈴木の『さみしい名前』も載っていた。そのノスタルジックな作風に惹かれた。『透明通信』は『さみしい名前』を含む10編(まんが以外の作品もある)を収録し、子供時代に憧れて怯えた夜の闇、熱に浮かされた夢、街灯の下に佇む人影、星空に響く夜行列車の警笛などのノスタルジーに満ちている。

ごろねこの本棚【9】(5)

  • ごろねこ
  • 2020/01/12 (Sun) 22:24:25
『海的煌煌(ウミノキラキラ)』(鈴木翁二)
青林工藝舎・2001年9月25日刊・B5判

「鈴木翁二最初期マンガ集」で、デビュー作の『庄助あたりで』も収録している。じつは、この前に「ガロ」に入選しながら掲載されなかった『眼球譚』という作品があり、それを読めるのではないかと期待したのだが、原稿紛失のため永遠に失われたようだ。とはいえ、収録された13編のうち6編はデビュー前(うち1編はデビュー後)に描かれた未発表作である。発表作も含めて、これらデビュー前後の作品を見ると、絵も内容も表現方法もあれこれと試行錯誤していたことがわかる。『透明通信』のノスタルジックな叙情は希薄で、生と死、性と暴力といった過激さが目につく。それが、デビューから9年後に連載された半自伝的作品の『夜の楽しさ』で独自の表現に昇華している。つまり青春の危さ自体から詩情を描くのである。色々な顔を持つ鈴木作品だが、ノスタルジックな叙情と青春の危い詩情を描いた作品が私は好きだ。

ごろねこの本棚【9】(6)

  • ごろねこ
  • 2020/01/13 (Mon) 22:12:09
『少年が夜になるころ』(鈴木翁二)
ふゅーじょんぷろだくと・1998年10月3日刊、これは2003年6月30日刊の新装改訂版・B6判
『こどものやまい』(鈴木翁二)
ふゅーじょんぷろだくと・2003年6月30日刊・B6判

ふーじょんぷろだくとが刊行していた珈琲文庫は、「喫茶店で珈琲を一杯飲む間に気軽に読める名作まんがを集めたシリーズ」という。カバーにコーティングがないので汚れやすいが、150ページ前後のシャレた作りの本だった。鈴木翁二の作品集も2冊出ており、発表年が偏らず『少年が夜になるころ』は8編の短編、『こどものやまい』は31編の掌編を収録しているので、鈴木作品の入門書としてはちょうどいいかも知れない。
珈琲文庫は、1994年の①『ひらめきラメちゃん』(勝川克志)から②『かかしがきいたかえるのはなし』(永島慎二)、③『メゾフォルテーmfー』(森雅之)を経て98年の④『少年が夜になるころ』までゆっくりと刊行して中断していた。それが2003年6月付で、その4冊の新装版と新刊⑤『こどものやまい』、⑥『まんがむかしばなし』(永島慎二)が刊行された。さらに04年5月付と7月付で、⑦『セシリア』⑧⑨『こんにちは先生(ハロードク)(上・下)』(水野英子)、⑩『氷河鼠の毛皮』(たむらしげる)、⑪⑫『ペッパーミント物語(上・下)』(森雅之)、⑬『二級天使』⑭『龍神沼』(石ノ森章太郎)が刊行された。そして、結局その14冊で終わってしまったのである。

ごろねこの本棚【9】(7)

  • ごろねこ
  • 2020/01/14 (Tue) 22:09:54
『かかしがきいたかえるのはなし』(永島慎二)
ふゅーじょんぷろだくと・1995年4月1日刊・B6判
『まんがむかしむかし』(永島慎二)
ふゅーじょんぷろだくと・2003年6月30日刊・B6判

珈琲文庫はいずれ全冊紹介したいが、とりあえず永島作品の2冊。『かかしがきいたかえるのはなし』は表題作を含め8編、『まんがむかしむかし』は昔話をモチーフにした2ページまんがが48編と他4編を収録している。『かかしがきいたかえるのはなし』について永島慎二は本書の「あとがき」に「お金をかせぐために、描かれるまんがが、有る。いっぽうで、その作者が自分のために、それを描かねば生きられなかった、と言ふ作品も有るのです」と書き、この作品を「自分が生きる為に描いた作品なのです」と述べている。それだけの自信作であり傑作なのだが、永島のアシスタント、というより弟子と言ったほうがいい3人(向後つぐお、村岡栄一、三橋乙揶)の鼎談によると、永島の下描きに大山学がペン入れをしたとのこと。大山ファンの私は、それを知っていっそうこの作品が好きになった。
ところで、珈琲文庫が14冊で終わった理由だが、⑭『竜神沼』以後のラインナップに、『ストップ!にいちゃん』などの関谷ひさし作品、『怪星ガイガー』などの杉浦茂作品、『スポーツマン金太郎』『背番号0』(寺田ヒロオ)、『まぼろし探偵』(桑田次郎)などを予定していた。ところが折しも復刻ブームで、関谷・寺田・桑田作品はマンガショップから、杉浦作品は青林工藝舎から復刻されてしまい、続刊を断念したそうだ。

ごろねこの本棚【9】(8)

  • ごろねこ
  • 2020/01/15 (Wed) 22:08:04
『ツノ病』(クリハラタカシ)
青林工藝舎・2004年6月30日刊・A5判

高野文子の『黄色い本』目当てで「アフタヌーン」の1999年10月号を買ったとき、四季賞大賞を受賞した『アナホルヒトビト』という作品が掲載されていた。作者はクリハラタカシ。「ガロ」に載りそうな作品だなと思ったが、強く印象に残った。単行本が出たら買おうと思っていたが、なかなか刊行されなかった。もっとも四季賞を受賞してもまんが家になれない人は大勢おり、単行本を出せないほうが普通だろう。そうして忘れかけた頃、この本が出た。『アナホルヒトビト』は収録しておらず、想像していたのとはまったく違った作品だった。白土三平の『忍者武芸帳』を想像していたら、杉浦茂の『猿飛佐助』だったというぐらいに違う。すべて頭にツノが生えたキャラクターが登場する話なのだが、そのツノの正体はすべて異なっている。表題作ではツノが生える伝染病「ツノ病」だが、そのアイデアは二度と使っていない。異世界が舞台の絵本のようなまんがという点で『アナホルヒトビト』と共通するが、何か意味ありげな要素は、すべてなくなっている。なお、現在売っている版はカバー絵が異なる。

ごろねこの本棚【9】(9)

  • ごろねこ
  • 2020/01/16 (Thu) 22:08:49
『ラッキーボギー』(クリハラタカシ)
青林工藝舎・2011年11月30日刊・A5判
『隊長と私』(クリハラタカシ)
青林工藝舎・2019年5月1日刊・A5判

クリハラタカシは、まんが家としてだけでなく絵本作家やアニメーション製作としても活動している。まんがでは、『ツノ病』とこの2冊を合わせて「ツノ三部作」という。『ツノ病』はまだまとまりのないエピソードの集まりだったが、その中に『科学忍者くん』という2つの話があり、ツノのあるキャラが隊長で、部下の科学忍者くんと二人で、Z団などの悪党と戦う話である。『ラッキーボギー』は、全編が『科学忍者くん』で、隊長と科学忍者くんの日常やら戦いの日々やらを描く。じつは科学忍者くんは、昔隊長が助けた女の子だという衝撃の事実が明かされるが、隊長は知らない。その中の「ラッキーボギー」編では隊長の頭に住み着いてしまった極楽蝶によって、隊長の体は溶かされてしまうが、科学忍者くんが自分の体に吸い取り、隊長を産み直す決意をする。『隊長と私』では、もはや素顔に戻った科学忍者くん、本名・雲隠月子と、再生した隊長が徐々に復活していき、科学忍者隊としての日常に戻るまでを描く。何だかよくわからない話が、よくわからないまま、よくわからない感動で終わるという不思議な読後感がある。

ごろねこの本棚【9】(10)

  • ごろねこ
  • 2020/01/17 (Fri) 22:06:43
『冬のUFO・夏の怪獣』(クリハラタカシ)
ナナロク社・2015年・8月30日刊・A5判

クリハラタカシのまんがは「ツノ三部作」だけではない。見るからに異世界を描いていた「ツノ三部作」に対して、この本はごく平凡な日常を描いている……ように見えるが、その穏やかでのんびりとした日常がじつは非日常だったりする。かと思えば、やはり何も起こらない日常のヒトコマだったりする。じつに油断のならない世界である。

ごろねこの本棚【9】(11)

  • ごろねこ
  • 2020/01/18 (Sat) 22:08:06
『睡沌氣候』(コマツシンヤ)
青林工藝舎・2011年6月25日刊・A5判

コマツシンヤも異世界の日常を描いている。わりと身近に見た和風の庭先から西欧風の街角もあり、深い海の底や遠い宇宙の果てや、夢としか思えない不条理な世界もあるが、共通するのは「ごちゃごちゃ」とした感じ。「お気に入りの物を箱に詰めていく、という作業を今はマンガの中でやっている」と作者が言うように、何が詰まっているのか、おもちゃ箱をひっくり返して眺めるような感覚で読めるまんがである。なお、タイトルの「睡沌(すいとん)」は作者の造語。意味は自分でもわからないと言っているが、「混沌とした睡りを誘う気候」といった意味だろうか。

ごろねこの本棚【9】(12)

  • ごろねこ
  • 2020/01/19 (Sun) 22:06:32
『月と博士』(坂田靖子)
白泉社・1986年7月1日刊・A5判

坂田作品にも異世界感が漂っているが、クリハラ作品やコマツ作品とは根本的に異なっている気がする。どう異なっているのかはうまく説明できないが、異世界なりに筋が通っているところだろうか。たとえば、表題作の『月と博士』。月を見るのが好きな博士が、すべての満ち欠けを見るのに1か月かかるのを残念に思い、一晩で月の満ち欠けを見ることができる装置を発明する。それからというもの博士は毎晩月を満ち欠けさせて眺めることに熱中し、速く年を取って死んでしまう。「一晩で月の満ち欠けを見る装置」って、何だ、そりゃ、と思うが、確かに一晩で1か月分の時間を経験していれば、およそ30倍の速さで年老いるなあと納得してしまう。クリハラ作品などが絵画的に発想された世界だとするなら、坂田作品は文学的に発想されているのかも知れない。

ごろねこの本棚【9】(13)

  • ごろねこ
  • 2020/01/20 (Mon) 22:12:02
『内気なジョニー』(多田由美)
スコラ・1996年10月16日刊・A5判

多田作品の舞台はアメリカ。すべてがアメリカ合衆国かどうかはわからないが、英語圏の国らしい。スタイリッシュな絵と構図で、ドラマの断片を描く。ドラマは、1970年前後のアメリカン・ニューシネマ、もしくはそれが今も続いていたらありそうな、青春の苦悩や歪んだ愛情や犯罪を描いている。完結した短編作品なのだが、まるで長い物語の見せ場のシーンだけを切り取ったようだ。話の前後や人物のキャラがよくわからないとしても、一番見たいシーンを見せてくれるわけで、そういう意味では無駄がない。同じ人物が他の作品に登場し、キャラ付けされているのかとも思ったが、そういうわけでもないらしい。イラストの連続のようなコマ運びの表現に、あすなひろしの青年まんがを思い浮かべてしまうが、あすなひろしよりはスタイリッシュに勝る。

ごろねこの本棚【9】(14)

  • ごろねこ
  • 2020/01/21 (Tue) 22:24:25
『GUN DRAGON Σ(SIGMA)』(寺沢武一)
集英社・1999年8月9日刊・B5判

背景や登場人物は3DCGで描き、主人公の「新撰組(ガン・ドラゴン)」の「戦闘員Σ(シグマ)」を実写で組み込むというSFまんが。たとえば、アニメや映画のフィルム・コミックに近いが、基になるフィルム(映画)がないのに、これを製作するのは大変な労力なのではないかと思う。フィルム・コミックよりは、よりまんがに近く、最初の試みとしては巧く出来ていたと思うが、後に続く作品がない。寺沢自身が続編の『GUNDRAGONⅡ/新撰組ガンドラゴンⅡ』を作り、表現技術はさらに進んでいるが、面白くない。冷静に読み返してみると話の面白さは同程度であり、表現は進んでいるのだから、悪くはないはずである。では、なぜ「Ⅱ」に魅力がなくなったのかというと、実写部分のタレントの差だろう。「Σ」を演じたのはインリン・オブ・ジョイトイで、実写キャストは彼女だけだったが、「Ⅱ」では知名度のないタレント数人が実写キャストを演じている。つまり「Σ」ではインリン・オブ・ジョイトイのグラビアとしての魅力が加わっていたのである。そうしたことを考慮して作らないと、この類の「まんが」は難しいかも知れない。なお、寺沢は03年に5年前から脳腫瘍で治療中であったことを発表したが、こうした表現方法の作品を発表したのは、それも理由だったのかも知れない。

ごろねこの本棚【9】(15)

  • ごろねこ
  • 2020/01/22 (Wed) 22:28:56
『コブラ(1)(18)』(寺沢武一)
集英社・(1)1979年8月15日、(18)1985年8月15日刊・新書判

『コブラ』は、寺沢武一の1977年のデビューから、中断をはさんで現在まで続いている寺沢の代表作である。初めは「少年ジャンプ」に連載し、ジャンプ・コミックスで単行本となった。その後、「スーパージャンプ」や、出版社を変えて「コミック・フラッパー」などに掲載し、B5判の単行本が刊行されているが、私が読んだのはジャンプ・コミックスの全18巻だけである。1990年公開のフィリップ・K・ディック原作の映画『トータルリコール』を見たとき、平凡な生活を送っている主人公が夢を見る機械によって、本当の自分に目覚めてしまうという設定が『コブラ』と同じだと思った。もちろん映画より10年以上前に描かれているのだが、翻訳時にほとんど話題にもならなかったごく短編の原作小説『追憶売ります』をいち早くヒントにして、コブラというキャラクターを生み出したセンスが凄い。

ごろねこの本棚【9】(16)

  • ごろねこ
  • 2020/01/23 (Thu) 22:07:10
『サザエさん(1)(66)』(長谷川町子)
姉妹社・(1)刊行年月日不明、(66)1974年9月25日刊・B6判

書店で、姉妹社版の『サザエさん』の1~3巻の復刻版を見た。3冊だけの復刻なのか全68巻を復刻するのか知らないが、昔、あれだけよく見かけた姉妹社版も、もはや復刻版が出る時代になったのかと驚きだった。ここに挙げた1巻は、いつ刊行されたかわからない重版だが、66巻は初版だと思う。姉妹社の本はおそらく初版だけに刊行年月日を記載し、重版には記載していないと思う。第1巻の初版がB5の横判で、店頭に置きづらいため取り次ぎからすべて返本されたエピソードが『サザエさんうちあけ話』に載っているが、1巻の刊行は縁起を担いで1947年元日らしい。なお第1巻も2版からB6判に改めたとのこと。昔、巻数の若い巻では、「そのやうだ」「いきませう」などと旧仮名遣いだったことを覚えている。姉妹社版は全68巻。他に面白い話を選んだ『よりぬきサザエさん』(全13巻)と4コマではない『別冊サザエさん』(全3巻)があった。

ごろねこの本棚【9】(17)

  • ごろねこ
  • 2020/01/24 (Fri) 22:06:34
『いじわるばあさん(1)(3)』(長谷川町子)
姉妹社・(1)1969年3月1日、(3)刊行年月日不明刊・B6判

姉妹社版は全6巻。「サンデー毎日」に1957年から8年間連載していた『エプロンおばさん』が終了したあと、「漫画読本」のボブ・バトルの『意地悪じいさん』(「エゴイスト爺さん」とも言う)の翻訳版を読んで常々「主人公はじいさんよりばあさんのほうが迫力があるのに」と思っていた長谷川が、1965年の新年号に8ページの『意地悪ばあさん』を描いた。「ぜひ連載を」という依頼を待たせ続け、ようやく1年後から連載開始になったという。単行本刊行時に『いじわるばあさん』とひらがな表記になり、初版が26万部出たが、『サザエさん』の初版が15万部だったというので、その人気のほどがわかるだろう。なお、1巻の初版は66年12月に刊行されているので、この1巻は刊行年月日の記載はあるが初版ではない。3巻の巻末には「いじわる.タンペン」として『いじわる看護婦』『いじわるクッキー』(クッキーは犬の名)『まんが幸福論』が収録されている。

ごろねこの本棚【9】(18)

  • ごろねこ
  • 2020/01/25 (Sat) 22:08:49
『サザエさんうちあけ話』(長谷川町子)
姉妹社・1979年3月8日印刷・A5判
『サザエさん旅あるき』(長谷川町子)
姉妹社・刊行年月日不明・A5判

どちらもまんがエッセイ。『うちあけ話』は78年に朝日新聞の日曜版に連載した自伝的な内容で、79年4月から放送されたNHK連続テレビ小説『マー姉ちゃん』の原作となった。まんがはもちろん絵物語風に描いているところもあるが、手書きの文章を、文字に絵を混ぜながら書く手法は珍しい。誰かがこの手法を使っていた気がするが、誰だったか思い出せない。
『旅あるき』は主に旅行関係のエッセイ。87年の3月から8月に朝日新聞の日曜版に連載して、同年の11月に刊行した。なお、この作品が長谷川町子の最後の作品となった。

ごろねこの本棚【9】(19)

  • ごろねこ
  • 2020/01/26 (Sun) 22:16:12
『新やじきた道中記(上・下)』(長谷川町子)
姉妹社・刊行年月日不明・1985年12月15日復刊・B6判

もちろん十返舎一九の『東海道中膝栗毛』のパロディであり、1951年11月からおよそ1年間「週刊朝日」に連載した。単行本は長らく絶版になっていたが、読者の熱烈なアンコールにこたえて復刊のはこびになった、と書いてある。同じく時代物を題材にした作品に『町子かぶき迷作集』があり、オールカラーの本だったが売れ行きが芳しくなく、姉妹社の社長(実姉)が絶版にしてしまったそうだ。こちらは復刊せず、『サザエさん』最終巻(68巻)に5編がモノクロで収録された。のちに朝日新聞出版で復刊されたが、それによると収録話数は8編であり、共通話は4編だった。『新やじきた道中記』の下巻にはサザエさん一家が登場する。京に絵の修業に行くサザエさんとやじきたが同行することになるが、あまりに下品な二人に腹を立て、別れてしまうというエピソードだった。話は完結していないが、連載時に完結していたのかどうかは不明。なお、この作品は1952年に映画化されていて、やじきたを花菱アチャコ・横山エンタツが演じている。江利チエミも出演しているが、映画にサザエさんは登場しないそうである。

ごろねこの本棚【9】(20)

  • ごろねこ
  • 2020/01/27 (Mon) 22:14:48
『長谷川町子の漫畫大會~町子・戦中の仕事~』(長谷川町子)
小学館・2016年4月16日刊・B5判

長谷川町子美術館の学芸員の方の「まえがき」によると、小学館発行の雑誌の中に長谷川町子の挿絵があると聞いたのがきっかけになって、昭和14年から18年にかけて発表された数多くの挿絵、まんが、絵物語などが発見された。戦前戦中には講談社の「少女倶楽部」や絵本の仕事は確認されていたが、小学館の仕事はまったく知られていなかったという。その中から約100点を厳選して掲載したとのこと。まず、きっかけになったのは村岡花子の翻案小説への挿絵。これはもうまるっきり長谷川町子の絵とはわからない。和風の絵も洋風の絵もあり、やはり絵の基礎はしっかりしていたことがわかる。もちろん長谷川町子とわかるタッチのまんがもあるが、むしろジャンルやテーマによって画風を変えていたことがわかる。また驚くことに、姉妹社の社長として長谷川町子を支えた「マー姉ちゃん(長谷川毬子)」の画業もまたすばらしい。画家を目指しながら、一家を支えるために挿絵を描くようになり、さらに妹を支えるために絵をやめてマネージメントに回る。長谷川町子のドラマは、『マー姉ちゃん』と姉が主役になるのがわかる。